塾長の考え(小6のCちゃん)【中編】
「で、何に気づいたのっ?」
「もう無理かもしれないです…あ~っ!」
「何がどうした?」
「実はもう親が願書を書いていて…」
「何!? それで?」
「いや、わからないっす、もう出したかも」
「ダメじゃん、それじゃもうダメじゃん」
「今から電話かけてきていいっすか?」
「お母さんにってこと?」
「はい」
「じゃあ今すぐにっ!」
「はいっ!!」
塾内の非常階段のところに行って、
電話をかけている様子のAくん。
鉄製の重たい扉の向こうで話をしている。
普通ならば聞こえてこないはずの声が、
ところどころこちらに聞こえてくるほどの、
音量の大きさ…。
しばらくして、
小走りに私のところへ戻ってきたAくん。
「塾長っ、大丈夫でしたっ!」
「おお」
「ギリギリセーフっす」
「それならいいんだよ」
「で、俺は今から何を?」
「あ、ああ、前回の続きだよ」
「前回の続きっすね」
「そうそう」
「わかりましたっ!」
それから2時間後。
「塾長っ、終わりましたっ!」
「お、うん」
「で、次は何を?」
「…、次はこれだよ」
「わかりましたっ、て、これは…!」
「何、それをやるんだよっ!」
「え、でも…これは…」
困惑した顔のAくん。
たまたまそばにいた予備校生のBくんが、
中身をちらっと見て微笑。
「塾長、またやってんなぁ」
そんな感じの表情でこちらを見て微笑。
Aくんはというと、
Bくんと私の顔を交互に見て、
手元のプリントの問題を再度見直した。
「え、これをマジでやるんすか??」
(続く)