障害年金の「保険料納付要件」について
相当因果関係(2)
相当因果関係とは、「個々のケースによりますが、前の疾病又は負傷がなければ、後の疾病が起こらなかったであろうと認められる場合は、相当因果関係ありとみて前後の傷病を同一傷病として取り扱います。ただし、通常、後の疾病には負傷は含まれません。」と日本年金機構では説明をしています。
日本年金機構が示している「相当因果関係」の「あり」「なし」の具体的例は下記とおりです。ただし、これはあくまで例にすぎません。これ以外の傷病の「相当因果関係」は、主治医の所見、認定医の所見により決まります。
また、日本年金機構の示している下記の「相当因果関係なし」の内容に「高血圧」と「脳出血と脳梗塞」がありますが、これは医学的には因果関係があるとされています。
しかし、障害年金の認定おいては「脳出血と脳梗塞」の原因として、高血圧以外にも、加齢、遺伝的要素、喫煙歴、飲酒歴、肥満、糖代謝、脂質代謝異常等様々な要因が重なって発病していることも考えられるため、「高血圧」だけを原因として発病したと断定できないという理由から「相当因果関係なし」としていると思われます。(判例における日本年金機構側の主張を引用しています)
「糖尿病」と「脳出血と脳梗塞」も「相当因果関係なし」としているのも同じ理由からだと思われます。
従って「脳出血と脳梗塞」の初診日は、発病後初めて病院に行った日とされるケースがほとんどです。ただ、私の経験上「心原性脳塞栓」のように明らかに心臓関係の病気が原因の脳梗塞の場合、初診日は、心臓関係の病院に初めて行った日となっています。
【相当因果関係ありとして取り扱われることが多い例】
●糖尿病と糖尿病性網膜症又は糖尿病性腎性、糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉鎖症)は、相当因果関係あり。
●糸球体腎炎(ネフローゼを含む)、多発性のう胞腎、慢性腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係あり。
●肝炎と肝硬変は、相当因果関係あり。
●結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合は、相当因果関係あり。
●手術等による輸血により肝炎を併発した場合は、相当因果関係あり。
●ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場合には、相当因果関係あり。
●事故又は脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係あり。
●肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係あり。
●転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係あり。
【相当因果関係なしとして取り扱われることが多い例】
●高血圧と脳出血又は脳梗塞は、相当因果関係なし。
●近視と黄斑部変性、網膜剥離又は視神経萎縮は、相当因果関係なし。
●糖尿病と脳出血又は脳梗塞は、相当因果関係なし。
●ポリオ(小児麻痺)とPPS(ポストポリオ症候群)は、相当因果関係なし。
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