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コラム

判決の劣化

2020年2月27日

コラムカテゴリ:法律関連

 民事訴訟で判決をもらった時に、判決文が劣化したことを感じている。もちろん、全ての判決がそうだとは言わず、「ああ、なるほど。そう書くか。」等と関心させられ、かつ、基本に忠実な判決ももちろんある。
 関心・納得させられる判決は、一審でこちらが勝訴した時には「高裁でもこれは大丈夫」と思えるし、一審で敗訴した時には控訴理由が書きにくい。
 いい判決とはそういうものだと思っている。

 しかし、最近は基本中の基本もできていない判決をもらったりする。勝っても喜べないし、負けた時は控訴理由が書きやすいことになる。
 法律の文書の書き方として、条文解釈をした上で規範を導き出し、その上でその規範から本件の事実をあてはめた場合、この事件ではどうなるかということを書くのが基本中の基本である。昔の司法試験はこれが書けないと合格しなかった(今の修習生の中には、話をしているとこれすら知らない人がいて、どうやって論文を書いているのか、どうやって合格しているのか不明である。)。
 これができていない判決があるのである。
 突然裁判所が規範を書いてきて、その規範に基づくとこれこれであるで終わっているのである。
 いや、この規範はどこからどうやって導き出したのか?と頭の中がハテナマークでいっぱいになる。
 最高裁の確定した裁判例であればそれをひっぱってきて規範とするのはわかるのだが、そういう訳でもないのである。

 交通事故でも、計算から既払い金を引くのを忘れている判決もある。私は被害者側なのでよいのだが、当然これは保険会社側が控訴すると、その部分は必ずひっくり返る。私の訴状で既払い金は書いているので、主張がないわけではない。完全な見落としである。これは保険会社の代理人と雑談していると、割合よくあるらしい。割合あっても困るのだが。。。

 こういった判決が増えてくると、裁判は宝くじか夜店のアテモンみたいなものとなってしまう。
 右陪席クラスの力をあげないといけないと裁判所内でも問題となっているようだが、高裁できちんとした判決をもらいたいと思う。しかし、こうした裁判官が高裁クラスになった時、どんな判決をもらうことになるのかと思うと、暗澹たる気持ちになっている今日この頃である。

この記事を書いたプロ

中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(中隆志法律事務所)

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