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中隆志(なかたかし)

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コラム

読書日記「水底の女」

2017年12月13日

 早川書房。レイモンド・チャンドラー。
 村上春樹の新訳によるチャンドラーのマーロウものの長編の最後である。
 心待ちにしていたのであるが、こうして出版されて、村上春樹訳のマーロウに会えないのは大変寂しい。
 あとがきで村上春樹自身もマーロウにもう会えないのかと思うと寂しい、チャンドラー・ロスの状態と書いているが、まさに読み終えて私も同じ思いである。
 短編については、新訳で色々な人が訳したものが、少し前に早川書房から出ているので、村上春樹もさすがに訳さないだろう。
 村上春樹訳のチャンドラーが読めなくなる(新作という意味だが)のは大変寂しい。

 旧題は、「湖中の女」で、推理ものとして読むと、世界各国の本格推理小説を読んできた人には物足りないというのは村上春樹も述べているが、プロットが一つしかなく(他の長編は二つのプロットが入り混ざり複雑な様相を呈するのだが)、その点が弱いといえば弱い。
 しかし、チャンドラーの魅力はそういうところにはなく、本格から外れたところにあり、プロットというよりは、マーロウの際だった魅力にこそあるのであって、本編のマーロウもいかんなく、「マーロウらしさ」を出しており、それが嬉しい。

 内容はこれから読む人のために書かないが、本年の読書ベスト10の間違いなくベスト1である(それは内容いかんに関わらず、マーロウだからである)。
 チャンドラーを読むと、大変幸せな気分になれる。
 もちろん、人によるだろうけれど、少なくともそういう人が世の中にはたくさんいるからこそ、村上春樹はチャンドラーを訳したのである。
 しばらく、村上春樹訳のチャンドラーロスが続きそうである。

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