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コラム

業務に繋がる専門とそうでない専門

2011年3月1日

コラムカテゴリ:法律関連


専門という言葉は使えないかもしれないが、ある分野の事件を多数手がけていて、その分野に強いというか得意であるというのは、それぞれの弁護士で異なるであろう。

 たとえば、弁護士で民事暴力事件(要するにヤクザがからんで企業なんかにたかりにくる事件)が得意な人は、ヤクザ相手につらい事件をすることになるが、後になれば大手企業(金融機関など)から、「ヤクザが来ても安心」ということで顧問を依頼されることがあり、これは経営的に得意分野が役立つ場面である。
 特捜検事が辞めたあと、ホテルなどに何もしないのに用心棒的に顧問弁護士として、年間数百万円の顧問料をもらっていることもあると聞く。そんな目にあってみたいものである。

 これに対し、消費者被害事件を得意というか多く手がけている弁護士(私もそうである)は、この分野が経営的にプラスになることはなく、むしろマイナスである。消費者被害事件は、弁護士が得られる費用は低額であることが多いし、手間がかかるので、次々に消費者被害事件を引き受けると、経営的にはマイナスであることが多い。それならそのような分野は経営的にやらなければよいではないかとつっこまれそうであるが、そうしたら誰が被害者を救済するのかという話になり、しんどい事件ばかり引き受けるはめになるのである。K藤S一郎君とたまにそんな話をして、「消費者被害事件をやる弁護士が一番ウブやなあ。なんの見返りも求めてへんしなあ」などと言っている。

 犯罪被害者支援事件も同じような事件で、相手から賠償金が取れることもあまりないので、訴状を構成する時も、「どこかに責任追及できないか」と考えて中々つらかったりする。ただ、これも誰かがやらなければならないと思うからやっているし、他の犯罪被害者事件をしている弁護士もそうであろうと思う。

 私は交通事故の被害者側も割合多いが、時には相当依頼者にとっても事件を思い出すだにつらい事件や、被害者が死亡していて実体がよく分からない事件などを苦心して行うことも多いが、私はそういう事件をする巡り合わせになっているのかとも思う。

 事件的にしんどい事件だと、依頼者との信頼関係構築が出来ずに途中で終わってしまう事件もないではない。後味のよいものではないが、依頼者は自らに問題があるとは中々考えてくれない。

 私が利害関係があって出来ない事件で、私からすれば普通の事件をある知人の弁護士にやってもらうべく紹介したら、「中君、ようこんなしんどい事件やるなあ」と言われてショックを受けたこともある。私からしたら普通の事件なのに…。

 しくしく。

この記事を書いたプロ

中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(中隆志法律事務所)

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