将来の本人保護の契約について~見守り契約、任意後見契約~
「遺言をつくろうと思っていますが、まだ少し早い気もします。何歳ぐらいまでにつくればよいのでしょうか。」
遺言に関するご相談では、先の様なお問合せをいただくことがあります。
また、これに関連して、「10年以上前に遺言をつくったのですが、さすがにもう時効でしょうか?」というお問い合わせもあります。
これらは、遺言の必要性を感じながらも、「より適切なタイミングでつくりたい」という思いや、「遺言に時効があるのでは」、「一度つくったら、もう変更出来ないのでは」というお考えからのお問い合わせだと思われますが、遺言には“期限”や“時効”に関する規定は存在しませんので、たとえ10年以上前に作った遺言であっても、期限切れとか時効で無効になる、という様なことはありません。
ただ、この点につきましては、遺言作成日からあまりに時間が経過しておりますと、記載した財産に大きな変化が生じたり、相続人自体が変わってしまったりしている可能性もありますので、あまり前からつくっておくのは適当ではない場合もあります。
そして、遺言をつくり替える回数にも制限はありませんが、前の遺言とつくり替えた遺言の両方が存在していたことが原因で、遺言者の真意を巡って争いになってしまったというケースもありますので、以前につくった遺言は全て破棄して、最新のものだけを保管しておくことが重要です。
もし、前の遺言が公正証書の場合には、次も公正証書にすることが、無用のトラブルを避ける為に重要となります。
また、遺言に記載した財産(預貯金や不動産など)は、そのままにしておかないといけない、ということもありません。
一般的に、遺言はその作成時に存在する財産の引継ぎ方法を指定するものですので、その後に財産を処分することを禁じるものではありません。
この為、預貯金の引き出しや解約、不動産の売買なども自由に行うことが出来ます。
年齢によっては決まらない
「人生100年時代」と言われ、以前よりも健康寿命が伸びている現代ですが、認知症やご病気の影響により、70歳代でも、遺言をつくるのが難しくなってしまう方は少なからずおられます。
私も、遺言のお手伝いをさせていただいていた80歳代前半の方が、公正証書をつくる日まで決めたところで、遺言者さまの突然のご病気により、作成が出来なくなってしまったという経験をしたことがあります。
当然のことながら、人によって健康寿命は異なりますので、遺言をつくるのは何歳が適切なのか、という問いに明確な答えはないのですが、認知症のことから考えますと、60歳代で発症する方はあまりおられませんし、遺言のご相談をされる方も70歳代半ば~80歳第前半の方が最も多いということもありますので、おおよそのところは70歳代になってからが目安ではないかと思われます。
ただ、認知症の様に少しずつ症状が出始める様なものあれば、脳梗塞などの様に、突然にして遺言能力に変化が生じてしまう様な病気もありますので、ご自身の中で遺言の必要性を感じられたのであれば、早目に形にしていおた方がいいということは言えます。
遺言をつくるべき方とは
遺言をつくる年齢以上に問題となるのが、遺言がないと、その後の相続で揉めてしまう可能性が高いと思われる場合です。
次の様な状況の方は、早目に遺言をつくっておくべきでしょう。
①相続人が配偶者と兄弟姉妹の方
②介護などの関わり方に、お子様によって大きな違いがある場合
③前の配偶者との間に子供がいて、再婚をされた方
④一人で生活をされている未婚の方
⑤婚姻関係でない方との間に子供がいる方
⑥推定相続人の中に行方不明者がいる方
①について
一般的に、揉めてしまうことが多い相続人の状況です。
特に、配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹との間で、付き合いがあまりない、またはお住まいが離れている、という様な場合には、それまで問題が無いと思われる関係であったとしても、「相続をきっかけ」にして、関係性が悪くなることがあります。
兄弟姉妹には「遺留分」がありませんので、「配偶者に全て相続させる」と遺言した場合、配偶者と兄弟姉妹との間で相続の話し合いをする必要がなくなります。
②について
同じ子供であっても、親との同居の有無やお住いの距離、仕事や家族の状況などで、介護の関わりに差が出てくるのは、仕方のない部分ではあります。
ただ、実際に介護を主体的に担っているのは、息子の妻や娘の夫という様な、直接の相続人以外の方であることも多く、その方々は将来の相続で主体的に関わることが出来ませんので、「介護と相続は話が別」という様な話の流れになってしまいますと、それまで仲が良かったご家族同士であっても、それが原因で不仲になってしまう場合もあります。
介護に関する時間的拘束や身体的負担などを考慮し、そのお気持ちを酌んだ遺言をつくるということも、愛情の一つと言えるのではないでしょうか。
⑥について
相続人の中に行方不明の方がいる場合には、その方がいない状態で相続の手続きをすすめたとしても、それは無効となります。
その様な場合、「失踪宣告」の申立によって、その方が亡くなったとみなされるか、「不在者財産管理人」の申立を行い、その方の代理人が相続の協議に入る、という前提を踏まえる必要があります。