相続税について① ~その税率と計算方法、申告期限や控除~
皆様、こんにちは。
前回は、相続税の仕組みについて、おおまかにお伝え致しましたが、今回は相続税が課税される相続財産について、もう少しお伝えさせていただきます。
相続税の申告を検討をする場合、前回お伝えした「基礎控除額」と、相続財産とを比較する必要がありますが、どのようにして相続財産を確認することになるのでしょうか。
相続税が課税される財産は、被相続人が亡くなった時点での、土地や建物などの不動産、預貯金や現金、有価証券など、その他金銭的価値があるものは、すべてが課税対象となる財産となります。
預貯金や現金以外のものは、すべて金銭価額に換算して合算し、その合計額で確認をすることになります。
不動産のうち、建物の金銭価額は、「固定資産税評価額」と同じ金額となります。
こちらは、市町村から毎年4月頃に送付されます、「固定資産税納税通知書」に記載されております。
市町村によって、記載名称に多少の違いはありますが、(固定資産税)「課税標準額」という記載がされている金額が、そのまま相続税における、相続財産の建物の金銭価額となります。
土地の金銭価額は、先程の固定資産税評価額とは違いまして、「路線価方式」という評価と「倍率方式」という評価で確認することになります。
おおまかに言いますと、「路線価」とは、国税庁の定めている評価額で、土地が面している道路について、1㎡あたりの金額が評価されており、その評価額に所有する土地の面積を掛けることで、土地の金銭価額が算出されます。
こちらは、国土交通省の定めている「公示価格」に対しまして、おおよそ80%にあたる価額になります。
「倍率方式」とは、道路に路線価が定められていない地域に対して用いる方式で、市町村の地域ごとに固定資産税評価額へ掛ける倍率が規定されております。
この倍率に、固定資産税評価額を掛けたものが、その土地の金銭価額となります。
また、これらの方式で算出された金額は、固定資産税評価額よりも価額は大きくなりますので、固定資産税納税通知書の課税標準額において土地の価額を計算されていた場合は、相続財産の評価額が増えることになります。
この点は、相談会などでもよくご質問をいただくところでもありますので、注意が必要です。
土地の金銭価額の確認方法につきましては、次回でもう少し詳しくお伝えさせていただこうと思います。
株式などの有価証券につきましては、常に相場変動がありますが、どのように金銭に換算するのでしょうか。
こちらは、原則として「相続開始日(亡くなられた日)の相場価額におきまして、次のア~エにおいて一番低い価額によるもの」、とされております。
ア、相続開始日の終値
イ、相続開始日の当月の終値の月平均額
ウ、相続開始日の前月の終値の月平均額
エ、相続開始日の前々月の終値の月平均額
相続税の課税対象となる、その他の財産
この他、相続税の課税対象となる財産には、次のようなものがあります。
①生命保険や退職金など
これらは、亡くなってから金銭が支払われますので、亡くなった方の相続財産に含まれるかどうか、という議論があるところですが、相続によって取得した「みなし相続財産」として、相続税の課税財産に含まれる、とされております。
ただ、これらにつきましては、「500万円×法定相続人の数」までは、非課税となっております。
例えば、亡くなった方の法定相続人が2名ですと、死亡保険金が1,000万円までであれば、その死亡保険金には相続税は課税されない、という事になります。
②名義預金
「名義預金」とは、金融機関などでご家族名義の口座をつくり、口座名義人以外の方が入金をしていたものをさします。
よくあるケースでは、子供や孫名義で口座をつくり、そこへ両親や祖父母が入金をされている場合です。
相続税の課税対象となる財産は、「その口座名義人が誰か」という事では無く、「その財産の実質的な所有者は誰か」という事が重要となります。
もし、名義預金だと判断された場合には、その金銭は相続財産に含まれる事になります。
名義預金ではなく、口座名義人の方のものであり、もう亡くなった方の財産ではない、つまり、口座名義人の方の固有財産である、とする場合、それは贈与をしたという事になります。
贈与という行為自体は、当事者間の「あげます」・「もらいます」という意思表示によって成立しますので、契約書などが無くても成立しますが、仮に税務署などから問い合わせがあった場合、それが一方的に口座に入金されたものなのか、贈与というお互いの意思表示があったものか、外見上は全くわからない為、口座名義人の固有財産だと認めてもらえない場合があります。
また、通帳や印鑑を口座名義人ではなく、入金していた方が管理していた場合も同様です。
これらの理由から、口座名義人の固有財産だと認めてもらうには、①贈与契約書をつくる、②通帳や印鑑は口座名義人が管理する、ということが必要になってきます。
贈与契約書につきましては、孫が未成年であれば、親(贈与する方からすれば子供)と贈与契約書を交わすことになります。
③被相続人が亡くなる3年前以内に取得した財産
相続税の課税財産には、相続開始日(亡くなった日)より3年以内に受けられていた贈与も、相続財産に含まれる事になり、その金銭価額は、相続時ではなく、贈与時の金銭価額にて計算することになります。
こちらは、「亡くなる直前に贈与をしていたので、相続財産はありませんでした」、という事を防ぐという趣旨が含まれております。
また、贈与を受けられた時に贈与税が課税されている場合は、その課税額は相続税が課税される場合に差し引く事が出来ますので、贈与税と相続税が2重で課税されることはありません。
④被相続人から取得した「相続時精算課税」を適用した財産
「相続時精算課税」とは、両親から子、または祖父母から孫などから受けた贈与について、2,500万円を限度として一度だけ贈与税が非課税になる制度ですが、こちらを用いて申告した場合は3年以上前の贈与であっても、相続財産の対象として計算する事になります。
また、こちらも相続時ではなく、贈与時の金銭価額にて計算することになっております。
相続財産の価額より、控除できるもの
これまで、相続税の課税財産にはどのようなものがあるのか、という事をお伝えしてきましたが、相続税の課税財産より除外できるものもあります。
①債務
被相続人に債務(借金)があった場合、それは差し引いて計算する事ができます。
例えば、1,000万円の預金を遺しておられた方に、債務が500万円ある場合ですと、差し引いた500万円が相続財産となります。
②葬儀費用
被相続人の葬儀に負担した費用は、相続財産より差し引く事が出来ます。
この葬儀費用には、葬儀自体だけではなく、お通夜に要した費用も含まれます。
但し、墓地や位牌の購入費用、香典返しやその後の法要に用いた費用などは、遺されたご家族さまが負担するものになりますので、控除することは出来ません。
次回は、「相続財産における、不動産の評価方法」について、もう少し具体的にお伝えしようと思います。
よろしくお願い致します。