弁護士に定年はない
前回に引き続き、キャンプと法律について書いてみたい。
今回は、キャンプをする側で関わってくる法律についてである。
森や林で勝手にキャンプしてはいけない
最近は、キャンプ場ではない森林などの場所にテントを張り
キャンプをしている方を、Youtubeなどでよく見るようになった。
森林には、大きく分けて、私有地と国有地の2種類がある。
まず私有地について。
私有地とは、持ち主(私人)の所有権(民法)が及んでいる土地であり
所有権とは、その物を自由に使用、収益、処分できる権利のことで
いうなれば、その物を完全に支配することができる権利である。
これは、その持ち主が監視していなくても、柵などで囲ったりしていなくても
法律上、当然に認められるものである。
そのため、その土地に立ち入ることが物理的に可能だったとしても
持ち主の所有権が及んでおり、その持ち主が立ち入りを容認していない限り
立ち入れば、所有権を侵害していることになる。
例えば、自宅に柵を設置していないからといって、庭に誰でも自由に立ち入ってよい
などと誰も思っていないのと同じである。
所有権の対象が宅地であれ、森林であれ、その及ぶ力は同じと考えてよい。
したがって、持ち主が容認していない森林に勝手に立ち入って
キャンプなどをすることは、所有権侵害であり、してはいけないことである。
次に国有地について。
国有地とは、文字通り国が所有者の土地である。
国有の森林、国有林は、私有地と異なり、自由に立ち入ることができたり
テントを張ってキャンプすることができる場所もある。
他方で、国有林であっても、自然公園に指定されている場合
自然公園内は「特別保護区」、「第一種特別地域」などに区分され
原則として「特別保護区」では、テントの設置や焚き火が禁止され
「第一種特別地域」では、テントの設置が禁止されているなどの規制がある。
(ちなみに、自然公園内には、私有地が多く含まれている。)
したがって、国有林内であれば、自由にキャンプすることができる
というものではない。
また、私有地であれ、国有地であれ
森林内で、樹木の伐採や山菜などを採取すると、森林法上の森林窃盗という罪になる。
別の観点では、森林内で火の取り扱いを誤れば
森林火災を引き起こすリスクもある。
では河川敷ではどうか
河川敷なども
自由にテントを張ったりキャンプしたりしてもよい場所と思われがちであるが
意外にも、河川敷には、私有地が多く含まれている。
そのため、森林について述べたことが、私有地である河川敷にも当てはまる。
そして、河川敷でテントを張ることができる場所であっても
自然公園法上の許可が必要となることもある。
まとめ
つまり、山林や河川敷といった、一見誰も管理していないように思われる場所であっても
民法上の所有権や自然公園法の規制が及んでいる場所があり
必ずしも自由にキャンプをしたりしてよい、というものではないということだ。
Youtuberの人は、恐らくそのあたりをきちんと確認し
許可を得る必要があるときは許可を受けているのだろう。
あるいは、山林を購入してしまい、自らの私有地にしている方もいる。
結論としては、「キャンプ場ではない場所でキャンプしたい!」と思ったら
所有者が誰で、法律上の規制などが及んでいないのかどうか
ちゃんと確認し、OKな場所でキャンプをしましょう、ということになる。
その場合でも、自然の一部であることを忘れずに
「行った時よりも綺麗にして帰る」くらいの気持ち(僕が心がけていることである)
で行っていただきたい。
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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)
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