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ちゃんとした裁判官

西村友彦

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テーマ:子どもの権利

皆さんは、児童福祉法(児福法)28条1項申立てというものをご存じだろうか。

児童相談所長が、父母ら等からの虐待があるとして
父母らの同意なく、子どもを強制的に施設等に入所させることの許可を
家庭裁判所に求める手続である。

この申立てがなされた場合
最高裁が公表している統計によると(平成26年まで)
毎年70~80%以上が認められ、却下される確率は10%にも満たない(平成26年は2.2%)。

つまり、児福法28条1項申立てがされてしまうと
ほぼ間違いなく、申立が認められ、子どもは施設等に強制的に入所させられてしまう
ということである。


それが、先日、僕が担当している事件で
裁判所は、児童相談所長の児福法28条1項申立てを認めず
申立てを却下する、との判断を下してくれた。


ここで付け加えておきたいのは、僕は、児童虐待を許していない。
本当に当該父母らが、子どもを虐待しており
子どもを監護させることが著しく子どもの福祉を害すると考えられる場合は
その代理人となって、児福法28条1項申立てを争うことはしない。


僕が依頼を受けた事案では、父による虐待はあったが
母の監護には、適切ではない面もあったものの
子どもに対して、愛情を持って関わってきていた。
その母のみが依頼者であった。

母は、子どもが一時保護になった後に、僕の指導もよく受け入れて
改善すべき点を真摯に改善してきていた。

児相も、母との面接の過程で、その母の様子を認識し、一定評価もしていた。

それが、「裁判所の判断を仰ぎたい」などと言って
児福法28条1項申立てを行ったのである。


裁判上の手続においても、児相は
子の通っていた学校や自治体の担当者らに対する照会結果について
原資料を提出することなく、児相が要約した文書を証拠として提出した。
その内容は、母が学校や自治体担当者らから聞いていたものとは全く異なるもので
母による養育の不適切性をあげつらうものだった。
(当然、かかる点の不当性は主張した。)

更に、家庭裁判所の調査官も
子どもが現在委託保護されている先の里親にのみ調査を行い
上記の学校や自治体担当者に対する調査は行わなかった。
(この点の不当性も主張した。)

家庭裁判所における調査官の果たす役割は極めて大きい。
調査官は、心理に関する専門知識を有しているため
裁判官が調査官の意見に依拠することは多い。


本件においても、調査官が上記のような次第だったため
裁判官が調査官に流され、申立てを認めてしまうのではないか
と考えていたが、結論は、前記のとおり、申立てを却下してくれたのである。

実に、ちゃんとした裁判官が担当してくれてよかった。

裁判官は、母の監護について、適切ではなかった面はあるものの
父と離婚する決断をして現に別居しており
自らの改善すべき点を真摯に認めて改善してきていることなどを
評価してくれた。


本件で、子どもが母と離ればなれになってから
もうすぐ丸1年になる。

子どもが親と強制的に離ればなれになること
親が子どもと強制的に離ればなれになること
の意味を、児相は本当に分かっているか。

もちろん、真実虐待があり
子どもを強制的に保護しなければならないケースはある。

しかし、本件は、そのような事案であったか。
事実経過を客観的に把握しようとすれば
本件で母と子どもを引き離す必要が、ある時点でなくなっていたことは明らかだった。

僕には、児相が、社会の目ばかり気にして
虐待について把握すれば、何でもかんでも親と引き離しさえすればよい
と思考停止していたように思えてならない。


僕は、子どもの権利を護りたいと思っている。

そのためには、子どもの監護に不十分、不適切な親がいるのであれば
介入して、指導し、改善を求めることが、子どもの福祉に適うと考えている。

それを超えて、今回のケースのように
児相が強制的に親子を引き離そうとするのは、子どもの福祉に適わない。


子どもたちのために、これからも闘っていくつもりだ。


※ 3月19日(土)に、僕がこれまで少年事件等をする中で感じてきた
  裁判所調査官や児童相談所児童心理士、少年鑑別所心理技官などの
  専門職の子どもへの関わりや問題について
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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)

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■ 企業法務
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西村友彦(弁護士)

夷川通り法律事務所

トラブルを未然に防ぐことを目指し、中小企業、個人事業主を含む企業法務、不動産関係、信託、離婚、遺産分割、宗教法人関係、少年事件など幅広い分野の事件に対応し、解決へと導いていく弁護士として活動している。

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