ちゃんとした裁判官
厚労省の人口動態統計によると、毎年、日本で20万組以上の夫婦が離婚している。
他方、同統計によると、約60万組の夫婦が婚姻しているので
毎年、結婚した夫婦の数の3分の1程度の割合の夫婦が離婚していることになる。
これはよく言われていることで、ご存じの方も多いかもしれない。
離婚に至る理由は
不貞行為、DV、子どもへの虐待、性格の不一致などが
我々弁護士が関わる事件として多いのではないかと思う。
離婚に伴う夫婦関係単体の清算としては
財産分与(婚姻後に夫婦が形成した共有財産の振り分け)を行い
慰謝料が発生する要素があれば(不貞行為、DV等)これを支払い
年金分割できれば年金分割を行う、ということになる。
上記の夫婦関係単体の清算については
基本的には、立証可能な客観的事実に従って行われることになる。
(調停や和解では、客観的事実を前提に調整が行われることも多い。)
これについては
事案ごとに、正解とまではいかないとしても
およそ、このような解決がよいであろう、という解決方法が
我々弁護士にはみえることが一般的ではないかと思う。
一番悩ましいのは
親権者(通常は監護者)とならなかった親と、子どもとの関係である。
このことは、離婚後の面会交流など
非監護親との将来的な関わりの場面で顕在化する。
ある程度、親と自分との関係について
自らの意思を表明できる中学生以上などの子どもであれば
その意思を前提として考えることも可能であろうが
とりわけ
小学校低学年や未就学児童においては
仮に表面的に表明される子の意思があったとして
それが真意に基づくものか否かは慎重に判断すべきである。
子どもが非監護親に会いたくないと言ったとしても
それは、自らを養育していってくれる監護親の顔色を窺ったり
また、監護親からの暗示を受けての発言という可能性も多分にある。
現状の面会交流事件などでは、これを認めるべきなのかそうでないのか
どちらが子どもにとってよいのか、判断に苦しむ、ということが多い。
しかし
少し別の視点からみたとき
このように、離婚後、子どもが、非監護親に、会うか会わないか、という
選択にとどまっていることは、世界的にみて、極めて後進的である。
アメリカや韓国では、共同親権の選択肢があり、共同養育を行うことが望ましい
との価値観が支配的となり、それに従った法整備がなされているようである。
(「離婚で壊れる子どもたち 心理臨床家からの警告」(棚瀬一代))
つまり、日本のように、離婚すれば
どちらかの親のみが親権を持ち、単独で養育をしていかなければならない
他方の親は、養育費を支払い、面会交流するのみ
ということになっていないのである。
離婚しても、子どもは子ども、非監護親も共同して養育するべき
という考え方である。
僕は、児童虐待に対して、これをいかになくし
子どもを救済してあげられるか、ということに
強い関心を持って弁護士をしてきている。
その関係で、京都で子どものためのシェルターを初めて作った際
その創設に携わり、NPO法人の名前も僕のアイデアが採用され
(「子どもセンターののさん」)
NPO法人の登記や、各種助成金の申請等も行った経験もある。
(現在は一会員という立場だが。)
そのため、特に児童虐待を行った親との関係では
離婚後、子どもと引き離すのが当然、面会交流するなどもってのほか
百害あって一利なし、との考えを何の疑いもなく持ってきた。
しかし、アメリカでは、児童虐待を行った親との関係でも
離婚後、子どもは継続して関わりを持つことが(もちろん様々な条件はあるが)
子どもの健全な成長にとって望ましいとの考えを当然の前提として
子どもと非監護親との関係が形成されているようである。
親子の面会交流が問題となる時
虐待された子どもを養育する監護親の立場からすれば
虐待する親に子どもを再び会わせるなどもってのほか、言語道断
と考えることは当然であるといえる。
現在の日本においては、虐待を行った非監護親を教育し、改善させる制度がない。
そのような状況では、虐待した非監護親に会わせられようはずもない。
しかし、子どもの立場に立った時
僕が事件でお会いする子どもさんの声を聞いていても
やはり、親子の関係を完全に断ち切ってしまうことが正しいことではないのではないか
と思う。
日本でも、ようやく数年前から、共同親権・共同養育の問題が
国レベルで議論されるようになってきた。
子どものためには、諸外国の知見を踏まえ、一刻も早く、共同親権・共同養育を
可能とする社会制度が整備されなければならないと思う。
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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)
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