ブランディングの効果はすぐに現れるものではありません
自分たちの商品は誰のために作っているのか
マーケティングの考え方で「ターゲットを設定する」ということが良くいわれます。最近では「ペルソナ」ということばも一般的になってきました。しかしこのターゲットやペルソナというのは、なかなかマーケティングの中でもやっかいな問題です。
一昔前なら「年収はどのくらいで」「都市近郊の新興住宅地に住んでいて」「子どもは小学生が2人」「家族構成は」「車は・・・」「こだわりのあるもの選びが・・・・」という項目をできるだけたくさん並べて対象となる人物像をあぶり出せば良かったのですが、現在のように消費行動がどんどん多様化してくると、今までのような漠然としたターゲット設定では実際にその対象者に訴求が届いているのかどうかが曖昧で、マーケティングの成果がわかりません。
特に多いのが「こだわりのある・・・・」という設定。これはいったい何に対してどうこだわっているのかさっぱりわかりません。「こだわり」というものは、もっと狭い範囲にその人の意識が集中するものですから、もっともっと具体的ではっきりしていないといけません。
「年収」にしてもそうです。同じ年収600万円でも家族構成やその人たちの親から引き継ぐであろう遺産、職業の将来性や安定性などによっても全く違います。
ですから現在では「ターゲット」を設定するときに今までよりももっと詳細に、もっと深い設定が必要になっています。それを具体的な人物像に落とし込んだものがペルソナですが、だいたいの場合そのペルソナも複数設定しないとカバーできないことが多くなっています。
もっと決めうち的な設定
ターゲットの設定にはもっと詳細に、深くと書きましたが、昨今のように市場がどんどん多様化し、つかみ所のないものとなってきていると、その設定というものは大変難しく、絞り込む「程度(深さ)」も重要になってきます。絞り込み方が浅いと対象者は多くなりますが、ターゲットとして信憑性の低いものとなってしまい、逆に絞り込みが深すぎるとその対象者がどこにいるのかたどり着けないこととなってしまいます。
それではどうしていいのかわからなくなってしまいますが、私が考えるターゲットの設定はもっともっとシンプルでわかりやすいものです。
それは「こんな○○の●●な■■■が欲しい人」、これだけです。例えば「高くても良く切れる包丁が欲しい人」とか「イチゴがいっぱいのフレッシュなケーキが欲しい人」というように、その人の年収がどうであれ、家族構成がどうであれ、そういう限定したものが欲しい人を決めうちするのです。
従来のターゲット設定が広いところからだんだん狭く絞り込んでいく考え方であったのに対し、これからはあらかじめもっともっと限定した条件を設定し、それ以外の条件はいろいろあって当たり前、という考え方で、はっきりと「そのもの」自体が欲しいと思う人を設定するのが正しいように思います。
それを欲しいと思う人に売るにはどうすればよいかが見えてくる
このようにシンプルで明快な設定にすると、その商品を売るためにどうすればいいかがはっきりと見えてきます。「イチゴがいっぱいのフレッシュなケーキが欲しい人」には新鮮なイチゴをできるだけたくさん使ったケーキを作ればいいし、「高くても良く切れる包丁が欲しい人」にはコストをかけてでも良く切れる素材にしたり、手間をかけて良く切れるような製造法を考えればいいのです。
そうすればその商品の競争力ができ、価格競争だけにとらわれない販売が可能になるはずです。
「どうすればよいか」を達成するのが難しい
このように絞り込んだものづくりをすればよいというと簡単なように思えますが、実際はここからが大変。「新鮮なイチゴ」をどうすればたくさん確保できるか、「コストはかかっても良く切れる素材」とは何か、などここから現実化するのが難しいのが普通です。
ただ、その困難を克服して初めて「売れる商品」ができるのであり、どこにでもある生半可なものでは価格競争に巻き込まれるだけでなく、消費者に見向きもされないものとなってしまいます。
私は、これからのものづくりが「決めうちのターゲット」と「その人たちをどうやって満足させるか」の2点にかかっていると思います。生半可で中途半端なターゲット設定ではその人たちを満足させる手立ても見えにくく、効果的な販促を実施するのは不可能です。
これからのものづくりは「欲しい人のタイプと欲しい理由がはっきりと見え、それを作り手が叶える」ことが重要であり、最大のテーマであるといえるのではないでしょうか。
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