2025年年金改正と対策 【第3部】財務と労務を最適化する対策

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
「年収の壁」は、単に従業員の働き方や手取りだけの問題ではありません。
中小企業にとっては、人手不足への対応、人件費管理、配偶者手当の見直し、さらには採用・定着戦略にも直結する極めて重要な経営課題です。
2026年度は税制改正や社会保険の要件変更が重なり、実務に与える影響が非常に大きい年となります。
本コラムでは、2026年度の年収の壁の全容と企業が取るべき対策を3部構成で解説します。
はじめに
まずは「年収の壁」の全体像を把握します。
一般に「103万円」「130万円」といった数字が独り歩きしていますが、実際には「税金の壁」「社会保険の壁」という大きく2つの異なる性質の壁があります。
特に2026年度は、従来の基準が大きく変わる転換点です。第1部では、最新の要件と改正ポイントを整理します。
2026年度の「年収の壁」
実務上、経営者が押さえておくべき基準は以下の通りです。
これまでの基準と2026年度改正による新基準を比較します。
| 区分 | 従来の基準 | 2026年度の新基準 | 実務上のポイント |
|---|---|---|---|
| 住民税の壁 | 100万円前後 | 100万円前後 | 自治体に差があり |
| 所得税の壁 | 103万円 | 160万円 | 本人に所得税がかからない目安 |
| 配偶者控除の壁(所得要件) | 103万円 | 123万円 | 扶養判定の所得要件が48万→58万へ |
| 配偶者特別控除の満願上限 | 150万円 | 160万円 | 控除額38万円が適用される配偶者の年収上限 |
| 配偶者特別控除の上限 | 201万6千円 | 201万6千円 | 配偶者特別控除の対象上限 |
| 社会保険の壁① | 106万円 | 2026年10月撤廃予定 | 賃金要件(月8.8万)が撤廃。週20時間以上が主軸に |
| 社会保険の壁② | 130万円 | 130万円(運用緩和) | 臨時収入は「見込み」に含めない柔軟運用 |
「年収の壁」といっても、税負担が発生する壁と、社会保険加入が発生する壁とでは意味が異なります。そのため、企業の人事労務担当者や経営者は、「どの壁が、誰に、どのような影響を与えるのか」を分けて考える必要があります。
税制・社会保険の主な改正点
2026年度改正で注意すべきは、「103万円」という数字がもはや基準ではないという点です。
令和7年度税制改正により、本人に所得税がかからない年収は160万円へ、扶養親族の所得要件は給与収入換算で123万円へと引き上げられました。
また、社会保険(106万円の壁)については、2026年10月に賃金要件が撤廃される方針です。今後は「いくら稼ぐか」よりも「週20時間以上働くか」が社会保険加入の判断基準となります。
まとめ
第1部では、2026年度の改正基準を整理しました。税金の壁が緩和される一方で、社会保険はより加入を促す方向へ進んでいます。
次の第2部では、これらの改正が企業と個人の「手取り」や「コスト」にどのような具体的影響を与えるのか、財務と労務の両面から深掘りします。



