【第3部】労働供給制約社会を生き抜く~令和8年度厚労省予算案から読み解く、中小企業の変革の羅針盤

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


 こんばんは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
「労働供給制約社会を生き抜く」第3部、今回は予算案から読み解く中小企業の対策について考察します。

はじめに

 第2部で示した影響を乗り越えるには、従来の「気合いと根性」による経営を卒業し、国の施策を戦略的に取り込む必要があります。
 第3部では、令和8年度予算を「変革の原資」に変えるための対策を、財務と労務の両面から考察します。

「攻めの経営」への転換

財務と労務をリンクさせた戦略

分野具体的な対策期待される効果
財務対策業務改善助成金+IT導入補助金など設備投資負担の軽減、生産性向上
財務対策付加価値の分析と採算向上賃上げ原資の見える化と効率化による採算改善
労務対策ジョブ型評価制度の導入適正な処遇と人材の定着
労務対策多様な正社員の働き方への対応採用ブランディングの強化
労務対策リスキリング制度の構築属人化の脱却と能力向上

財務:助成金は「収入を得るため」ではなく「生産性向上の足がかり」

 助成金はキャッシュアウトが先行するとともに、継続的な支出増加となることに対して抵抗を感じる企業が多いです。
また、助成金を「収入を得る手段」として捉え、受給が目的となっているケースもあります。
 しかし、先行投資としての位置づけを考え、「投資が今後の生産性向上に繋がるか」で判断する必要があります。目先のキャッシュアウトではなく、将来のキャッシュフローを見込んで検討する必要があります。

労務:属人化を排除し、組織を「見える化」する

 ITツールを導入しても、使いこなす人が変わらなければ意味がありません。
今回の予算で重点項目に挙げられている「デジタル人材育成」への支援を活用し、現場のベテランがデジタル化の恩恵を受けられるように教育が必要です。
これが「脱属人化」への第一歩です。

労務コンプライアンスという「基盤」の再整備

 助成金は、労務管理を整備するきっかけとなります。
この機会に未払い残業代リスクやハラスメント対策、働きやすい環境を整備し、「選ばれる企業」としての土台を築くチャンスでもあります。

「ジョブ型」と「インターバル」のパッケージ導入

 役割を明確にするジョブ型人事制度で効率を高めつつ、「勤務間インターバル制度」で従業員の休息を確保します。
 これは過重労働による法的リスクを回避するだけでなく、「働きやすい会社」「公正に評価してくれる会社」というメッセージにもなります。

女性の健康支援とマネージャー層の離職防止

 予算案でも強化されている「更年期障害等の健康課題への支援」をいち早く導入することで、経験豊富な女性社員の離職を防ぐことに繋がります。

 ここで対策をまとめます。

目的具体的アクション期待される効果
財務:投資の促進助成金等の活用キャッシュフロー安定、利益率改善
労務:人材の定着時短・在宅勤務、女性の健康支援離職率低下、採用コストの抑制
基盤:生産性向上ジョブ型人事、リスキリング、DX化属人化からの脱却、組織の底上げ

まとめ

 令和8年度の厚生労働省の予算案は、「労働供給制約社会」という状況でどう対応するかの羅針盤です。単なる人手不足への対応ではなく、国の支援を有効に活用しながら、どのように人を支援し協働していくか、が重要になります。
 企業の体制を変えることは、単なるコストの増加ではありません。5年後・10年後に、あなたの会社が「人が集まり、利益を生み出し続ける組織」として生き残るための、価値ある投資になります。
 変革への第一歩は、現状を知ることから始まります。まずは、自社の財務と労務の「棚卸し」から始めみてはどうでしょうか。

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江崎充豊
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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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