米国関税措置とその影響 ~中堅中小企業が取るべき財務・労務対策~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
日本は今、働きたくても働く人が物理的に足りなくて社会が回らなくなる「労働供給制約社会」というフェーズに突入しています。
厚生労働省が先日発表した令和8年度予算概算要求には、この危機を乗り越えるための国の意志が反映されていると思います。
今回は3部にわたりこの予算案を読み解き、企業が取り組む対策について考察します。
はじめに:本格的な「労働供給制約社会」の到来と過去最大の予算
厚生労働省が発表した令和8年度の予算概算要求額は、過去最大となる34兆7,929億円(前年比+4,865億円)。
この数字は、単なる社会保障の維持ではなく、日本の労働構造そのものを「作り変える」意思表示ではないかと考えています。
令和8年度 厚労省の予算概算要求案
まず、厚生労働省の予算概算要求案を見てみます。
表:令和8年度 厚生労働省予算概算要求案
| 区分 | 令和7年度予算額(億円) | 令和8年度要求額(億円) | 増減(億円) |
|---|---|---|---|
| 一般会計(総額) | 343,064 | 347,929 | +4,865 |
| うち年金・医療等経費 | 325,871 | 329,387 | +3,516 |
| うち裁量的経費 | 7,263 | 8,245 | +982 |
特別会計
| 区分 | 令和7年度予算額(億円) | 令和8年度要求額(億円) | 増減(億円) |
|---|---|---|---|
| 労働保険特別会計 | 33,158 | 33,229 | +70 |
| 年金特別会計 | 721,786 | 722,479 | +693 |
| 子ども・子育て支援特会 | 10,616 | 10,659 | +43 |
(出典:令和8年度厚生労働省予算概算要求の概要より)
次に、重点事項の施策内容と予算案を見てみます。
表1:令和8年度 厚生労働省予算概算要求の重点事項(案)
| 重点事項の柱 | 主な施策内容 | 概算要求額(案) |
|---|---|---|
| 賃上げ・非正規支援 | 中小企業の賃上げ支援、業務改善助成金再編 | 2,022億円 |
| リスキリング・労働移動 | デジタル人材育成、ジョブ型人事、円滑な労働移動 | 1,961億円 |
| 多様な人材の活躍促進 | 仕事と育児・介護の両立、女性の健康支援、週休3日制 | 1,326億円 |
| 人手不足への対応 | 医療・介護分野のマッチング、DXによる省力化 | 515億円 |
(出典:厚生労働省「令和8年度予算概算要求の主要事項」より)
予算案の背景
現在の日本は、単なる「人手不足」ではなく、労働の供給そのものが物理的に制限される「労働供給制約社会」にあります。
2024年の合計特殊出生率は過去最低を更新し、生産年齢人口の減少が加速。「募集をかければ人が来る」時代は終わりました。
国は、現役世代の急減という現実に直面し、これまでの「労働力の量」に頼るモデルから大きく転換しようとしています。
予算案の3つの重要事項
予算概算要求における重要事項は次の3つです。
保険・医療・介護体制の構築
賃上げと人材確保、提供体制の確保とDX推進、イノベーションの推進など
三位一体の労働市場改革
賃上げと非正規労働者の支援、リスキリング・ジョブ型人事、労働移動推進など
地域共生社会等の実現
地域の様々な人の支援、安心できる年金制度の確立など、
これらは、少ない人数で高い付加価値を生む組織への変革を促すメッセージです。
国は「変われない企業を支える」のではなく、「変わろうとする企業を加速させる」方向へ舵を切ることを示唆していると思います。
まとめ】
第1部では、国が過去最大の予算を投じて、「賃上げ」「生産性向上」「労働力再編」などに重点を置いている背景などを説明しました。
企業にとって必要なのは、「うちは人手不足だから賃上げできない」ということではなく、この予算をいかに自社の変革に繋げるかという視点です。
第2部では、この予算案が中小企業の「財務」と「労務」にどのような影響を与えるかを考察します。



