2025年年金改正と対策 【第2部】企業コストと個人リターンの比較

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は「2025年年金改正と対策」第2部、企業と個人の影響を数字から見ていきます。

はじめに

 第1部では、2025年年金制度改正の全体像を整理しました。
第2部では、それらの改正が実際に「いくら負担が増え、いくらリターンが見込めるのか」を、キャッシュフローの視点で具体的に見ていきます。
 社会保険料の増加は、企業にとっては避けて通れない固定費増加要因です。
但し、人事労務の観点で見ると、同時に人材確保・定着のための基盤整備でもあります。
ここでは、企業と個人の影響を並べて整理します。

社会保険適用拡大:負担と将来給付の損得勘定

 社労士として感じるのは、「保険料が増える」という点だけが強調され、将来の年金額や公的保障の中身が十分に伝わっていないケースが多いということです。
ここでは、留意点と併せて整理します。

 短時間労働者への適用拡大は、企業にとっては法定福利費の増加、個人にとっては手取り減と将来保障の増加という両面を持ちます。
【企業・個人の影響比較】

改正項目企業の影響個人の影響
企業規模要件の撤廃2035年10月には全事業所が対象、社会保険料負担が発生厚生年金加入者が増加し、将来の年金受給権発生
賃金要件の撤廃年106万円未満でも週20時間以上なら加入対象となり、社会保険料負担が増加将来の年金受給権発生の一方、保険料負担により手取りが減る可能性も
新規加入者への支援策新たに加入する短時間労働者に対し、最大3年間、会社が追加負担することで本人負担を軽減(全額制度支援)初年度の本人負担を最大25/50に抑制

【具体的なシミュレーション例】

1.第3号から第2号へ移行し、年収106万円で20年加入した場合
  → 将来年金は月額約8,800円増加(終身)
2.第1号から第2号へ移行した場合
  → 月額約1.5万円の保険料負担で、将来年金は月額約11,100円増加(終身)

高所得層・高齢就業者への影響

 「保険料だけが高くなる制度改悪」と受け取られやすいため、将来給付についての説明が不可欠となります。

1. 標準報酬月額の上限引上げ

 高所得層の社会保険料増は企業の利益を圧迫する要因となりますが、個人にとっては年金の上乗せとなります。

標準報酬月額本人保険料増(月額)年金増加額(10年加入時)
68万円(2027年9月〜)+約2,750円年約3.7万円
71万円(2028年9月〜)+約5,500円年約7.3万円
75万円(2029年9月〜)+約9,100円年約12.2万円

※企業も本人と同額の保険料負担が増加します。

2.在職老齢年金の見直し(2026年4月〜)

 これまで「年金が減るから働くのを抑える」という現行制度が緩和されます。
 基準額が月50万円から62万円へ引き上げられ、約20万人が年金全額受給可能となります。企業にとっては経験豊富なシニア層を戦力として活用しやすくなります。

3. 次世代への保障強化

 子の加算額は、子供が3人いる世帯では年間約30万円増加します。
公的保障の充実は、民間保険の見直し余地を広げる点でも重要です。

まとめ

 今回の改正で最も重要なのは、保険料負担増=単なる不利益ではないという点を、制度構造として理解してもらうことです。
社会保険料は掛け捨てではなく、年金・医療・遺族保障を含むパッケージであり、民間保険では代替が難しい性質を持ちます。
 企業にとっては、説明責任を果たしつつ制度を運用することで、従業員の安心感や定着率の向上につなげることが可能です。
 個人にとっても社会保険料の増加は短期的には負担ですが、年金という形でリターンを生んでいるとも言えます。

 最終回となる第3部では、これまでの内容を踏まえ、「企業と個人がどのような対策を講じるべきか」について整理します。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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