無期転換ルールと多様な正社員をどう対応するか  【第2部】無期転換ルールを巡る裁判例の争点

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
「無期転換ルールと多様な正社員」、今回は第2部の裁判例についてお話します。

はじめに

 無期転換ルールを巡る裁判例は増加しており、中小企業にとっても現実的なリスクとなっています。
 裁判では、単に「無期転換を認めなかったかどうか」ではなく、「契約更新の経緯や企業側の説明、労務管理体制全体」が問われます。
 第2部では、裁判例を争点ごとに整理し、企業側にどのような体制不備があったのかを確認します。

裁判で争点となりやすいポイント

 裁判例を整理すると、主な争点は次の3つに分けられます。

  1. 無期転換を見据えた雇止め
  2. 無期転換後の労働条件
  3. 多様な正社員の位置づけと待遇差

1.無期転換を見据えた雇止め

 裁判で多く争われているのが、無期転換申込権が発生する前後の雇止めです。
問題とされたのは、

  • 長期間更新が繰り返されていた
  • 更新を前提とした説明や運用がされていた
  • 無期転換が近づいた時期に突然雇止めされた

といったケースです。
 この場合、「契約更新への合理的な期待」が認められるかどうかが重要な判断要素となります。

2.無期転換後の労働条件

 無期転換後の賃金や手当、就業規則の適用を巡る争いも少なくありません。

  • 無期転換を理由にした不利益な条件変更
  • 規程の適用関係が不明確
  • 待遇差の合理性が説明されていない

といった点が問題視されています。

3.多様な正社員の位置づけ

多様な正社員については、

  • 正社員との違いが曖昧
  • 限定内容が契約書や規程に反映されていない
  • 待遇差の根拠が説明できない

といった点が争点になりやすい傾向があります。

第2部のまとめ

 裁判例から分かるのは、無期転換ルールの問題は制度よりも運用にあるという点です。
 次の第3部では、中小企業が実務として整備すべき対応策を解説します。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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