「労働時間の見える化」で組織を強くする ~中小企業が取り組むべき管理体制とは~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
昨日決定した税制改正大綱では、様々な税制が改正されました。
その中の「年収の壁」について、3部構成で取り上げます。
はじめに
これまで「年収の壁」は、勤務時間の調整を行うなどの「働き控え」の大きな要因となり、同時に企業にとっても人手不足や労務管理上の課題を生んできました。
2026年度の税制改正では、こうした問題意識と物価高による家計支援を背景に、「年収の壁」の一部に見直しが加えられています。
第1部では、年収の壁を整理し、今回の改正による変更点などを解説します。
年収の壁
年収の壁はいくつかありますが、そのうちの3つを紹介します。
| 年収の壁 | 内容 | 主な影響 |
|---|---|---|
| 130万円の壁 | 一定条件で社会保険加入 | 手取り減少・将来の年金給付の増加 |
| 106万円の壁 | 社会保険の扶養から外れる | 社会保険料の自己負担 |
| 160万円→178万円の壁 | 所得税の課税 | 税負担 |
社会保険の壁(106万円・130万円)
1.106万円の壁:2026年10月を目処に撤廃
短時間労働者は、年収106万円を超えて一定の条件を満たすと厚生年金・健康保険への加入が必要になります。
社会保険料の自己負担が生じるため、短期的には手取りが減少する場合がありますが、将来の年金額は増えます。
2.130万円の壁
年収130万円を超えると社会保険の被扶養者から外れ、国民年金・国民健康保険(会社員は勤務先の社会保険)に加入する必要があります。年間で数十万円の負担となるケースもあり、勤務時間の調整が最も起こりやすい壁とされてきました。
今回の改正の一つ「所得税の壁」
今回の改正の一つが「所得税の壁」です。
2026年度税制改正では、所得税が課税される年収基準が160万円から178万円へ引き上げられ、これまで課税されていた層の一部が非課税となります。
これにより、
- 働く時間を増やしても税金がかからない
- 「壁を意識した労働時間の調整」が少なくなる
などの効果が期待されます。
また、基礎控除・給与所得控除の引き上げにより手取り収入の増加に繋がります。
特に、給与所得者の約8割を占める年収665万円以下の層については、基礎控除の上乗せ特例措置の全部または一部の恩恵を受けるため、控除額は大幅に増えます。
第1部のまとめ
去年までの所得税の壁「103万円」は、30年近く変わりませんでした。
2年間で178万円まで引き上げられたこの改正は、約30年間パートタイム労働者や学生アルバイトの勤務時間を抑制し、「働き控え」という経済損失を続けてきた構造的な問題が見直される転換点ともいえます。
第2部では、所得税の壁の引き上げによる減税効果などを取り上げます。



