【もしもシリーズ第4回】やさしすぎる人事は組織を救えるか? ~平 静葉CHROの場合~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
中小企業のガバナンスについて、3部構成でお話したいと思います。
はじめに
近年、企業の経営環境は大きく変化し、求められるガバナンス水準が上がっています。
サプライチェーンの維持、働き方改革、採用難、経営者の高齢化・・・
こうした変化を乗り越えるためには、従来の「社長の経験と勘」だけに頼った属人的な経営から脱却し、組織として安定的に機能する仕組みが必要になります。
第1部では、社長・キーパーソン・実務担当者という3つの立場から、現場で起こり得る問題を事例として紹介します。
中小企業におけるガバナンスの現状
中小企業は意思決定スピードや柔軟さといった強みを持つ一方で、人材不足や制度の整備不足によってガバナンスが脆弱になりやすい特徴があります。
ガバナンスの課題
- 意思決定が社長に集中しすぎている
- 財務情報が共有されず、キャッシュフロー管理が属人的
- 組織図・権限が曖昧で人材育成が進まない
- 評価制度・賃金制度が形骸化し、採用で不利
- 働き方の多様化に制度が追いつかない
ガバナンスが課題の企業に起きうる事例
【事例1:社長】意思決定が属人化し、資金繰りが不安定に
A社では、交渉・設備投資・融資依頼など、すべての重要な判断を社長が一人で実施。
社内で状況を共有する機会がなく、キャッシュフロー計画もない状態。
結果として、資金繰りの見通しが甘いまま投資を行い、手元資金が逼迫。
急遽、金融機関から調達せざるを得ない中で、設備投資計画の甘さから思うように調達出来ず、計画の見直しに迫られた事例。
【事例2:キーパーソン】責任者の退職で、労務管理と顧客対応が混乱したケース
営業と製造を繋ぐ中核メンバーが退職し、案件管理と情報共有が一気に不透明に。
「誰が顧客との調整をまとめるのか」「誰が窓口なのか」が曖昧となり、社内では指揮命令系統が乱れ、残業が恒常的に。
営業面では見積り遅延や連絡漏れが発生し、顧客からの信頼も低下。
キーパーソンに依存し過ぎていたことが明確に浮き彫りになった事例。
【事例3:実務担当】業務プロセスの属人化のため作業が停滞したケース
総務担当者が行っていた給与処理、勤怠集計、経費精算などが「その人しか分からない」やり方であり完全に属人化。
担当者が休職すると、誰も内容を把握しておらず給与計算が遅延。勤務時間計算のミスも多発し労務リスクも発生。
また、マニュアルもないため社員教育に時間がかかり、業務効率が著しく低下。
第1部まとめ
第1部では、属人的経営によるさまざまな弊害を事例を通して整理しました。
社長、キーパーソン、実務担当者という三者の立場から見ると、ガバナンスの弱さが企業の成長や信頼に大きな影響を及ぼしていることがわかります。
次の第2部では、「これらの課題をどのように改善すべきか」
財務・人事・労務の3つの視点から、中小企業が取り組むべきポイントを解説していきます。



