AIと労働環境を考える ~第2部:AIで影響を受ける仕事と残る仕事、求められる人材像~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は、前回に続き「AIと労働環境を考える」についてお話します。

はじめに

 第1部では、AIが国内外の労働市場に「二極化」と「構造的変化」をもたらしていることを説明しました。今回は、AIにより影響を受ける仕事と残る仕事、AI導入時代に求められる新しい人材像を整理します。

AIやテクノロジーの進化で影響を受ける仕事、残る仕事

 AIやテクノロジーの進化によって影響を受ける仕事、残る仕事の例をまとめました。
以下は、あくまで「公開情報・他者の分析・私見」を踏まえた一般的な傾向を示したものであり、すべての企業・すべての職種に当てはまるものではありません。
 AIの影響度は業界構造、企業規模、業務内容、個人のスキルによって大きく異なります。
「絶対に消える/必ず残る」といった断定ではなく、現時点で見られる「傾向」 としてご理解ください。

区分影響を受ける仕事残る・伸びる仕事
事務・バックオフィス事務作業、帳票作成、銀行窓口、単純経理などコンプライアンス管理、人事企画、AI運用管理など
接客・サービスコールセンター、レジ係、受付などクレーム対応、顧客体験設計、ホスピタリティ教育など
運輸・物流タクシー運転手、配達員など危険物運搬、高度ナビゲーション、輸送管理者など
クリエイティブ単純ライティング、基本的な翻訳作業など企画、アート、UXデザインなど
専門職定型的な会計・税務・監査、簡易なコンサルなど介護、保育、ITアーキテクト、DXコンサルなど

「残る仕事」の共通点

 残る、あるいは価値が高まる仕事には次の特徴があります。

  1. 倫理判断・責任を伴う領域(法務・労務など)
  2. 顧客との合意形成や調整が必要な領域(営業、管理職)
  3. 専門性・暗黙知・高度な判断が求められる領域

 AIが支援できても、最終的な判断は人が担う必要があります。

「パープルピープル」という新しい人材像

 「パープルピープル」は デロイトトーマツグループが提唱した、AI時代に必要とされる人材像です。
定義
 ビジネス知見(青=Blue)とテクノロジー知見(赤=Red)の両方を兼ね備えた人材のこと。
名前の由来は、「ビジネス知見=青(Blue)」と「テクノロジー知見=(Red)」を組み合わせると「紫(Purple)」になることからきています。
 ビジネスとテクノロジーを橋渡しする存在であり、AI時代の競争力を高める人材です。

役割

  • 技術チームと経営層の通訳的な役割
  • 課題解決の推進者
  • 人とAIの役割や協調を設計する人材

 デロイトトーマツの調査では、AI導入企業の多くが「技術とビジネスをつなぐ人材が不足している」と回答。米国では「パープルピープル」が不足しているため、採用競争が激化しているとの報告もあるようです。
 日本でも単なるエンジニアや企画担当ではなく、両方を理解して橋渡しできる人材が求められています。

第2部 まとめ:AIの時代は「人の役割が変わる時代」

 AIによって影響を受ける仕事がある一方、人の価値がより高まる仕事も存在します。
専門性や判断力を持つ人材は今後ますます重要度が増し、パープルピープルのような経営とテクノロジーをつなぐ「橋渡し役」は企業の競争力に直結します。
 第3部では、この変化に対して企業はどのような体制を整え、従業員は何を身につけるべきかを整理していきます。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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