職場のハラスメント撲滅月間に学ぶ:判例と企業事例から考える職場の守り方 ~第1部:ハラスメントの実態と裁判例から見える企業の責任~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:労務・人事管理


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です。
今回は2部構成でハラスメントについてお話します。

ハラスメント撲滅月間とは

 厚生労働省は、毎年12月を「ハラスメント撲滅月間」と定め、職場におけるハラスメント防止の啓発活動を強化しています。企業に求められるのは、単なるキャンペーンの参加ではなく、研修の実施や相談窓口の周知、再発防止策の強化です。

調査結果から見るハラスメントの現状と課題

 令和5年度の厚労省調査によると、

  • パワーハラスメントの経験率は約3割
  • 被害を受けても「相談しなかった」人が半数以上
  • 防止規程を整備している企業は増加傾向だが、中小企業では未整備が依然として多い
  • カスタマーハラスメントは増加傾向。接客業・医療介護業での暴言・過度な要求が中心

この結果は、ハラスメントが依然として深刻な課題であることを示しています。

ハラスメントの裁判例

 企業がハラスメントにどう対応すべきかを考えるうえで、判例は重要な指針となります。以下に事例を紹介します。
1.カスタマーハラスメント
 夜勤中に患者から暴力を受けた看護師が後遺障害を負い、病院の安全配慮義務違反が認められました。裁判所は「完全防止は困難でも、応援体制や周知徹底を怠れば責任を問われる」と判断し、約2,000万円の損害賠償を命じました。
2.妊娠・出産・育児休暇ハラスメント
 妊娠中に軽易業務へ転換した際、副主任職を解かれ復帰後も地位が回復されず。最高裁は「本人の自由意思による承諾はなく、業務上の必要性も認められない」として、均等法違反の不利益取扱いと判断しました。
3.パワーハラスメント
 上司が部下に対し繰り返し暴言・過度な叱責を行い、精神障害を発症。
裁判所は業務指導の範囲を逸脱し、人格否定に及んだと認定。
企業に安全配慮義務違反による損害賠償責任が認められました。

まとめ

 これらの調査結果と判例は、企業がハラスメントに対して「予防・対応・再発防止」の体制を整える必要性を強く示しています。
では、実際に企業はどのように取り組んでいるのでしょうか。
 次の第2部では、具体的な企業事例を紹介しながら中小企業が参考にできる整備ポイントを考えていきます。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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