賃上げトレンドと最低賃金 ~企業が今すぐ取り組むべき実務対応~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:労務・人事管理


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は最低賃金についてお話します。

はじめに

 2025年は平均賃上げ率が5%を超え、賃上げがトレンドとなっています。人材確保や物価上昇への対応を背景に、政府も「賃上げ税制」や「最低賃金引上げ」を推進しています。
 こうした流れの中で、企業がまず確認すべき基準が「最低賃金」です。神奈川県の最低賃金(2025年10月より1,225円)は全国でも高水準です。

最低賃金に算入される手当・されない手当

 最低賃金に算入される、算入されない手当をまとめると下記です。
「毎月必ず支給される職務関連の手当」は算入されますが、交通費や残業代は算入されません。

算入される算入されない
基本給通勤手当
職務手当時間外割増賃金
技能手当休日・深夜割増賃金
賞与・慶弔見舞金

【事例】最低賃金未満はどっち?

 最低賃金以上かどうかは、月給制の場合、
「月給÷1か月の平均所定労働時間」
で計算します。
実際には年間ベースで計算するので、計算式は下記になります。
(月給×12ヶ月)÷ 年間労働時間

 年間所定労働日数250日、1日の所定労働時間を8時間(年間労働時間2,000時間)として下記のケースを考えてみましょう。

内容ケース1ケース2
基本給200,000円200,000円
職務手当 0円20,000円
時間外手当(不算入)30,000円10,000円
通勤手当(不算入)10,000円10,000円
賃金合計240,000円240,000円
算入賃金合計200,000円220,000円


(ケース1)算入賃金200,000円×12ヶ月÷2,000時間=1,200円<最低賃金1,225円:違反
(ケース2)算入賃金220,000円×12ヶ月÷2,000時間=1,320円>最低賃金1,225円:適法


 「月給制で残業代もしっかり払っているから大丈夫」などと思っていても、このように不算入の手当があるので注意が必要です。

企業が陥りやすいケース

  • 総支給額で判断してしまう
  • 月給制なら安心と思い込む
  • 手当の性質を区別しない
  • 最低賃金改定を見落とす

違反した場合は

 最低賃金法により、地域別最低賃金に違反した場合は50万円以下の罰金が科されます。
また、労働基準法により、特定(産業別)最低賃金に違反した場合は30万円以下の罰金が科されます。さらに労働基準監督署による是正指導、未払い賃金の支払い命令、企業イメージの低下などのリスクも伴います。
 違反は単なる法令違反にとどまらず、採用難や従業員離職につながる重大な経営リスクに繋がります。

まとめ

 最低賃金の確認は「総支給額」ではなく「算入対象となる賃金」で行うことが重要です。最新の最低賃金を基準に自社の給与体系を点検し、賃上げの議論を進める際には必ず最低賃金を下回らないかを確認しましょう。違反すれば罰則や社会的信用の低下につながるため、経営者にとって最低賃金の理解は不可欠です。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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