中小企業が賃上げを味方にする時代 ~2025年春闘とこれからの人材戦略~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
厚労省が公表している「労働経済白書」から現在の労働環境についてお話します。
はじめに
2025年9月に厚生労働省が公表した『労働経済白書(2025年版)』は、日本の労働環境の現状と課題を分析しています。白書でも言及していますが、医療・福祉、運輸、接客など社会インフラ関連業種における人材不足が深刻であり、企業の持続的成長に向けた対応が急務です。
今回のコラムでは、労働経済白書から中小企業経営者に求められる戦略を整理します。
労働環境の現状と特徴
1.人材不足の顕在化
介護職員や看護師、物流業界のドライバー、飲食・宿泊業などの人手不足
2.女性労働者の比率は高いが課題も
医療・福祉分野では女性比率が7割を超えるものの非正規雇用が多いなど、安定的なキャリア形成が難しい
3.働き方の多様化
副業・兼業、短時間勤務、リモートワークなど柔軟な働き方が広がり、従業員の価値観も「安定」から「効率性・柔軟性」へと変化
労働環境の課題
1.人材確保の難しさ
女性比率が高い業界でも、雇用の安定や待遇改善が追いついていない。
2.モチベーション低下
賃金がスキルに反映されないことで若年層の離職が加速。
3.職場環境の格差
相談体制や教育訓練が整備されていない職場は「働きにくさ」を感じることも。
今後の労働環境の方向性
1.生産性向上が不可欠
ICT投資や業務プロセス改善による効率化が鍵。
2.キャリアラダーの導入
従業員がスキルや経験を積みながら「はしご」を登るように成長できる仕組み。
各ステージで必要なスキルや役割を明示し、達成すれば処遇改善に。
3.働きやすさの競争力化
残業削減や休暇制度の柔軟化など「働きやすさ」が採用の差別化要因に。
企業側に求められる対応
人材不足時代に企業が持続的成長を遂げるためには、[質」や「定着」を意識した社内整備が必要です。
1.キャリアラダー制度の整備
スキルや経験に応じた段階的な評価・処遇を導入。
教育訓練プログラムと連動させ、従業員が「次に何を学べば成長できるか」を明確化。
2.育・研修制度の充実
OJTだけでなく外部研修や資格取得支援を組み込み、専門性を高める。
若年層にはキャリア形成支援を、ベテラン層にはスキル再構築の機会を提供。
3.働きやすい職場環境の構築
残業削減、有休取得促進、柔軟な勤務制度(時短勤務・リモートなど)。
メンタルヘルスや相談窓口の設置で安心感を醸成。
4. 評価制度の透明化
成果だけでなくプロセスやスキル習得を評価対象に含める。
公平性を担保し、従業員の納得感を高める。
5.人的資本経営の推進
人材育成・定着を「投資」と位置づけ、経営戦略に組み込む。
社内で「人材はコストではなく資産」という意識を醸成。
まとめ
医療・福祉分野のように女性比率が高い業界でも、雇用の安定性や処遇改善が追いついていない現状があります。ですので、「人を増やす」「女性参入を進める」こと自体が解決策ではなく、「雇用や待遇の質を高める」ことが持続的成長の鍵です。
中小企業こそ、キャリアラダーや働きやすさの整備を通じて、従業員の成長と企業の成長を両立させる戦略が求められます。
マネジスタ湘南社労士事務所は労務に関する相談を承ります。
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