最低賃金改定と業務改善助成金の拡充:中小企業が備えるべき対応

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は経団連が11月に発表した「労働移動の積極的な推進」実現に向けたアクションプランについてお話します。
はじめに:経団連発表のアクションプランの背景と現状
少子高齢化による労働力人口の減少、DXやグリーン分野など新産業の拡大により、人材の最適配置は社会全体の課題となっています。経団連の提言でも、労働移動を「人材流出」ではなく「人材循環」として捉え、社会的に推進する必要性が強調されています。
しかし現状では、労働者は待遇やスキル不安から転職に踏み切れず、企業も外部人材の受け入れや社内異動の柔軟性に課題を抱えています。
経団連提言のポイント
経団連は2025年のアクションプランで、労働移動促進に向けて企業・政府・教育機関の役割を整理しました。
1.企業の義務:法令遵守の下で柔軟な人事制度やキャリア支援を整備すること
2.企業の努力義務:通年採用、経験者採用、カムバック採用など多様な採用形態の導入
3.政府の役割:職業紹介機能の強化、労働需給データの整備
4.教育機関の役割:リスキリングや職業教育を労働市場と接続すること
これらは「人材を守る」だけでなく「人材を循環させる」ための仕組みづくりです。
ケーススタディ:A製作所の改革
新潟県の金属屋根部品メーカー・A製作所は、かつて残業が常態化し「残業するのが当たり前」という社風がありました。
1.経緯
2014年、社内講演会で「残業は生産性を下げる」という専門家の指摘を受け、社長が全社員の前で「残業ゼロ宣言」を実施。
これを契機に制度改革が始まりました。
2.取り組み内容
- 業務の棚卸しと標準化による効率化
- 時差出勤制度の導入
- 勤怠管理システムの活用
- 1時間単位の年休制度、副業解禁、テレワーク導入
- 男性育休取得率100%を達成する風土づくり
3.成果
月平均残業時間を約18時間から約1時間に削減。男性育休取得率100%を実現。さらに「イクメン企業アワード」グランプリなど外部評価も獲得。
この事例は、単なる業務改善ではなく、就業規則や制度を積極的に整備することで労働移動や働き方の柔軟化を実現した好例です。
中小企業の課題とチャンス
中小企業にとって労働移動は人材流出リスクとして捉えがちですが、視点を変えれば次のようなチャンスにもなります。
- 外部人材の獲得による新しい知見の導入
- 社内異動や教育訓練による従業員の活性化
- 成長分野への対応力強化
ただし、これらを実現するには規程整備が不可欠です。
就業規則や人事制度に「異動・転換」「教育訓練」「キャリア支援」の仕組みを明記し、従業員に安心感を与えることが、労働移動を前向きに位置づける第一歩となります。
まとめ
労働移動は避けられない社会的潮流です。中小企業にとってはリスクであると同時に、組織を活性化し成長分野に対応する好機でもあります。
そのためには、労働移動に関する各種規程を整備し、自社として主体的に取り組むことが不可欠です。外部環境の変化に備え、今こそ中小企業自身が行動に移すべき時です。
マネジスタ湘南社労士事務所では労務に関する相談を承ります。
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