【最終回】銀行員から見た「お金を貸したい企業」の特徴 ~信用力を活かす資金調達戦略~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
前回「中小企業の財務課題と支援ニーズ」に続き、今回は協働のためのポイント
についてお話します。
はじめに
第1部では、金利上昇・円安・人手不足といった財務課題が中小企業に重くのしかかっている現状を整理しました。そして、企業が「手数料を払ってでも受けたい」と考えるサービスランキングからは、売上確保・資金繰りの安定・人材確保・制度活用など、優先度の高い課題が浮き彫りになりました。
こうした課題に対応するためには、「金融機関や外部の専門機関」との協働が不可欠です。しかし、支援を受けるには企業側にも準備と意識が必要です。単に「困っているから助けてほしい」という姿勢ではなく、「何に困っていて、どう乗り越えたいのか」を明確に伝える力が求められます。
今回のコラムでは、中小企業が外部と協働するために取り組むべき3つのポイントを紹介します。これは、支援を“受ける”ための準備であると同時に、企業自身が自社を見直すいい機会にもなります。
1.自社を語れるようにする
外部との対話では、決算書だけでは伝わらない「会社の価値」を言語化する力が求められます。経営者自身が、自社の強み・弱み・目指すべき姿を客観的に整理し、語れるようにしておくことが重要です。
たとえば、養蜂業の熊手蜂蜜(福岡県)は、経営デザインシートを活用して「自然環境と共生する養蜂業」という自社の理念を明文化しました。単なる蜂蜜製造ではなく、「地域の生態系を守る活動そのものが事業価値」と再定義したことで、行政や地域金融機関との対話が深まり、支援の幅も広がりました。自社の存在意義を語れるようになったことで、販路開拓や地域連携にも繋がっているようです。
また、飲食業の株式会社てっぺん(東京都)では、飲食業という競争の激しい業界において、「人材育成を通じて社会に貢献する企業」というビジョンを経営デザインシートで明確化。社員の成長を軸にした経営方針を言語化することで、金融機関との事業性評価面談でも「単なる店舗運営ではない、教育型経営モデル」としての価値を伝えることができました。
こうした事例に共通するのは、
「自社の価値を“自分の言葉”で語れるようにすること」
そのためには、SWOT分析や経営デザインシートなどのツールを使って、社内で対話を重ねることが有効です。
「何が得意か」「なぜ選ばれているか」「どこに伸びしろがあるか」を整理することで、外部との協働がより実効性のあるものになります。
2.資金繰りの“見える化”を進める
利払い負担やフリーキャッシュフローなど、財務指標を使って資金繰りを整理することで、外部機関との会話がより具体的になります。
資金繰りやキャッシュフローを定期的に見直すことは信頼構築の第一歩です。
「いつ、いくら必要か」「どこに資金の余裕があるか」を明確にすることで、融資や制度活用の判断もスムーズになります。
3.制度活用の目的と内容を明確にする
補助金や助成金、低利融資などの制度を活用する際は、「何のために使うのか」「どの制度が適しているか」を具体的に考えることが重要です。
例えば、「設備投資に使いたい」「事業承継の準備に活用したい」といった目的を明確にすることで、取り組むべき内容が整理され申請や相談も的確になります。
更に、「どの部分が足りないのか」「どんな支援があれば前に進めるのか」など自社の課題と制度をリンクさせて言語化することで、外部機関との協働がより実効性のあるものになります。
まとめ:金融機関や外部の専門機関は経営の伴走者
中小企業にとって、「金融機関や外部の専門機関」は単なる「資金調達の窓口」ではなく、経営課題の解決に向けて伴走する存在です。
その関係構築や説明のためには、資金繰り表や事業計画などの資料が必要になるケースもあります。特に、事業性評価や制度活用を前提とした支援を受けるには、「自社の強みを語る力」「資金の流れを見える化する力」「制度の目的を明確にする力」が欠かせません。
こうした資料や考えを整理するには、金融機関だけでなく会計士や社労士、地域の支援機関などの専門家を活用することが効果的です。外部の視点を取り入れることで、経営の“見える化”が進み、対話もより実効性のあるものになります。
マネジスタ湘南社労士事務所では財務に関する相談を承ります。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



