「労働時間の見える化」で組織を強くする ~中小企業が取り組むべき管理体制とは~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は労働時間の管理についてお話をします。

はじめに

 働き方改革の流れの中で、企業に求められるのは「労働時間の適正な把握」です。
厚生労働省が策定したガイドラインでは、使用者に対し労働時間の客観的な記録と管理体制の整備を求めています。これは法令遵守だけでなく、従業員の健康確保や企業の信頼性向上にもつながる重要な取り組みです。

中小企業の現状と課題

 中小企業では、タイムカードやPCの使用履歴などを活用した労働時間管理が進んでいる一方で、自己申告制に頼るケースも少なくありません。自己申告による労働時間と実際の在社時間に乖離がある場合、割増賃金の未払いなどのリスクが生じます。
 特に注意すべきは、36協定の限度時間を超えて働いているにもかかわらず、記録上は守っているように見せかける「慣習的な過少申告」です。これは企業の法令違反リスクを高めるだけでなく、従業員の不満や健康問題にもつながりかねません。

適正な労働時間管理に必要な整備

 ガイドラインでは、以下のような措置が求められています。

  • 始業・終業時刻の記録:タイムカード、PC使用履歴などの客観的な記録を活用
  • 自己申告制の運用:調査による補正、申告時間と在社時間の乖離の確認
  • 賃金台帳の整備:労働日数、時間外・深夜労働などの正確な記載
  • 記録の保存:出勤簿、タイムカード等を3年間保存
  • 管理責任者の役割:労働時間の実態把握と改善策の検討
  • 労使協議組織の活用:労働時間等設定改善委員会などによる現状分析と対策立案

これらの整備は、制度導入だけでなく、社内の意識改革と運用ルールの明文化が不可欠です。

規程の見直しと専門家の活用

 労働時間の管理は、就業規則や賃金規程、労働時間管理規程などの整備と密接に関係しています。制度があっても、実態に即していなければ意味がありません。
たとえば、研修や準備作業が業務命令であれば、それも労働時間に含まれることを明記する必要があります。
 こうした見直しは、社労士など専門家の助言を得ながら進めることで、法令遵守と実務運用の両立が可能になります。特に中小企業では、限られた人員での運用となるため、外部の視点を取り入れることが効果的です。

まとめ

 労働時間の「見える化」は、従業員の健康確保だけでなく、企業の持続可能性と信頼性を高める鍵となります。今こそ、自社の労働時間管理を見直し、制度と運用の両面から整備を進めるべき時です。就業規則や各種規程の見直しを含め、専門家に相談しながら、実態に即した管理体制を構築していきましょう。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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