日本の労働経済の課題(その1) ~人手不足の対策~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は施行から1年経過したフリーランス新法についてお話します。
はじめに
2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以下、フリーランス新法)は、業務委託契約に基づいて働くフリーランスの取引環境を整備し、保護を図るための新たな法制度です。多様な働き方が広がる中、フリーランスの地位向上と公正な取引の実現を目指すこの法律は、企業の人材活用にも影響を与えています。
施行から1年が経過した今、現場の課題と実務のヒントを厚生労働省の指導事例をもとに振り返ります。
概要:フリーランス保護の4本柱
フリーランス新法では発注事業者に対して以下の義務が課されています。
1.業務委託条件の明示義務(第12条)
委託内容、報酬額、支払時期、納期などを書面または電磁的方法で通知することが義務付けられています。
2.ハラスメント防止措置の義務化(第14条)
フリーランスに対するパワハラ・セクハラ等を防止するため、社内規定の整備や相談窓口の設置が求められます。
3.育児・介護、契約解除時の配慮義務(第13条、第16条)
長期契約の解除には原則30日前の予告が必要です。また、育児・介護・疾病等の事情への配慮も義務化されています。
4.不利益取扱いの禁止
フリーランスが相談や申告を行ったことを理由に契約を打ち切るなどの不利益な取扱いは禁止されています。
指導事例から見える実務上の課題
厚生労働省が公表した指導事例から、制度の理解不足や対応の遅れが浮き彫りになっています。以下に代表的な事例を紹介します。
1.ハラスメント防止措置の不備
ある清掃業者では、就業規則にハラスメント防止規定が存在していたものの、対象が「労働者」に限定されており、フリーランスが含まれていませんでした。
労働局の指導を受け、対象範囲を「労働者および業務委託先の者」に拡大し、フリーランスにも周知を行いました。
【実務ポイント】
規定の文言を見直し、フリーランスも保護対象に含める必要があります。
2. 募集情報の不適切表示
ある企業では、求人サイトに掲載した業務委託の募集要項に報酬額や勤務地、契約期間などの記載がなく、応募者に誤解を与える内容となっていました。指導後、必要事項を明記した募集要項に修正されました。
【実務ポイント】
求人広告や募集ページも対象。記載漏れがないか定期的なチェックが求められます。
3.契約解除時の予告義務違反
長期にわたり業務委託していたフリーランスに対し、突然の契約打ち切りを通知した事例では30日前の予告がなされていなかったため、労働局から指導が入りました。
【実務ポイント】
契約期間の定めがない場合でも、実態として継続的な委託関係がある場合は「長期契約」とみなされる可能性があります。
対応へのポイント
フリーランス新法への対応は単なる法令順守にとどまらず、企業の信頼や人材確保にも直結します。そのため、以下のような対応が求められます。
- ハラスメント防止規定の整備と対象範囲の見直し
- 業務委託契約書・募集要項の点検と整備
- フリーランス向け相談窓口の設置
- 管理職・現場担当者向けの研修と周知
制度の趣旨を正しく理解し、実務に落とし込むことが企業の持続的成長と多様な働き方の実現につながります。
まとめ:制度定着の鍵は「実務への落とし込み」
フリーランス新法は、企業とフリーランスの間に「信頼と公正な関係」を築くための第一歩です。制度の定着には、現場レベルでの理解と対応が不可欠です。
また、対応に際しては各種規程の見直しや周囲への周知も必要となります。どのような規程をどのように整備するか、専門家と相談しながら進めていく事が必要となります。
マネジスタ湘南社労士事務所では労務に関する相談を承ります。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



