【妄想コラム】もしも白洲次郎が現代のCEOだったら ~“プリンシプル経営”から“パーパス経営”へ~
こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
前回に続いて今回も人件費についてお話をします。
はじめに:人件費は「見える固定費」、だからこそ計画が要る
最低賃金の引き上げや社会保険料の上昇により、人件費は中小企業にとってますます重い固定費となっています。毎月発生するこの支出は企業の財務に直結するため、計画の中でも慎重に検討する必要があります。
前回のコラムでは、売上高人件費率をもとに人件費は企業体質を映す鏡であることをお伝えしました。今回はその続編として、「人件費をどう予算化するか」という実務的な問いに対し、具体的なステップと部門間連携のヒントを整理します。
人件費の基本構成
人件費予算は、単に「給与総額を前年並に設定する」といった大雑把なものではなく、以下のように分解して設計することで精度と柔軟性が高まります。
・基本給(昇給予定含む)
・賞与(支給月・支給率・業績連動要素)
・社会保険料(法定福利費)
・法定外福利費(通勤費、住宅手当など)
・教育訓練費
・退職金・引当金
・採用費(求人広告、面接費用など)
前年実績との単純比較ではなく、「昇給予定」「採用計画」「退職予定者」など、将来の変化を織り込んだ設計が重要です。
労務部門が財務部門に提供すべき情報
人件費予算の精度は、労務部門からの情報提供にかかっています。
財務部門が正確な予算を組むためには、以下のような情報が不可欠です。
・昇給予定:定期昇給やベースアップの有無、昇給幅
・賞与支給方針:固定支給か業績連動か、支給月と支給率
・採用計画:採用人数、時期、職種、想定年収
・退職予定者:退職金支給の有無と時期
・労務リスク:未払い残業代や訴訟リスクなどの潜在的コスト
月次で人件費の変動要因を共有すると、予算の見直しや資金繰りへの対応がスムーズになります。
予算と実績の差異分析で会社の特徴を把握する
予算は立てて終わりではなく、実績との比較によって初めて意味を持ちます。
差異分析を通じて、会社の特徴や改善余地が見えてきます。
・採用費が予算を超過:採用難か、計画の甘さか?
・賞与支給額が予算を下回る:業績連動の仕組みが機能しているか?
・社会保険料が増加:昇給や従業員構成の変化が影響していないか?
「なぜズレたか」を分析し、「どう修正するか」を次年度予算に反映させることが重要です。
人件費予算は経営方針を映す
人件費予算は、単なるコスト管理ではなく経営方針を反映する重要な計画です。
昇給方針・採用戦略・教育投資など、すべてが企業の方向性と結びついています。
・昇給の設計:社員への期待値や評価制度との整合性を示す
・採用費の配分:成長戦略や人材ポートフォリオの反映
・教育訓練費の位置づけ:人的資本経営の姿勢を表す
「人件費予算=経営方針」と捉え、経営層と現場が同じ方向を向けるように設計しましょう。
まとめ
人件費予算は、労務と財務の連携によって「生きた計画」になります。
単なるコストの積み上げではなく、「人への投資」と「経営方針」をつなぐ予算設計が重要です。そのためには、人事制度や福利厚生などの各種規程の整備が必要となります。
次年度予算策定に向けて「人件費の見える化」を進めてみてはどうでしょうか。
マネジスタ湘南社労士事務所では人事、労務、財務に関する相談を承ります。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



