【第1回】銀行員から見た「お金を貸したい企業」の特徴 ~決算書だけではない、銀行員の6つの視点~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
10月より改定された最低賃金引き上げにより上昇する人件費。
今回は人件費が経営に与える影響を取り上げます。
はじめに:最低賃金の引き上げと人件費の増加
最低賃金の引き上げにより中小企業の人件費は確実に上昇傾向にあります。
とりわけ、労働集約型の業種では「人」にかかるコストが企業の財務体質に直結しています。
日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2023年or2024年発表)によると、業種別の売上高人件費率の平均値は以下の通りです。
| 業種 | 売上高人件費率(平均) |
|---|---|
| 福祉・医療 | 64.3% |
| サービス業 | 41.7% |
| 飲食・宿泊業 | 40.2% |
| 運輸業 | 38.3% |
| 製造業 | 36.7% |
| 建設業 | 31.5% |
このように業種によって人件費の負担割合は異なりますが、固定費として財務に影響を与える重要な要素であることには変わりありません。
人件費は「投資」か「負担」か
人件費は企業の成長を支える「投資」である一方、売上や利益とのバランスが崩れると「固定負担」として財務を圧迫します。
・売上高人件費率が高い業種ほど、労働生産性とのバランスが重要に
・賃金水準の見直しは、単なる削減ではなく業務効率との整合性が鍵
過去の人件費構成を並べてみると、どの項目が固定化しているかが見えてきます。
資金繰りと賃金支払能力
給与は毎月発生する支出であり、資金繰りの安定性が問われます。
また、賞与や退職金などの一時金は資金の準備が不可欠です。
・賃金支払い能力は、資金繰表やキャッシュフロー計算書で確認
・収支予測を考慮しない賞与原資積立や退職給付引当金設定は資金ショートの原因に
賞与や退職金などスポットで発生する支払は、収支予測を確認した上で決定することをお薦めします。そのためには資金繰り表の作成が欠かせません。
労務トラブルの「見えないコスト」
未払い残業代、解雇トラブル、ハラスメント対応など、労務問題は財務に影響を及ぼします。訴訟費用や和解金だけでなく、信用低下や採用難といった間接的損失も発生します。
・労務リスクは「潜在的な負債」として財務に影響
・内部通報制度や就業規則の整備は予防的コストとして有効
・労務監査や外部専門家の活用は、リスクの早期発見に
トラブル予防のための整備にもコストはかかります。しかし、トラブル発生するとコストも掛かる上に対応に時間と労力がかかります。
財務と労務の連携が企業体質を強くする
財務部門と労務部門が連携することで、「人」に関する支出とリスクを統合的に管理できます。特に中小企業では、部門間の壁を越えた情報共有が重要です。
・人件費の予算管理と実績分析を定期的に
・離職率や採用コストを「人材定着率」や「採用単価」として数値化し、財務指標として活用することで人的資源の健全性を可視化
人件費に関するKPI(Key Performance Indicator)を設定し、財務と労務の両面から定期的にレビューすることも一案です。
まとめ
中小企業の財務健全性は、「人」に関する支出とリスクをどう管理するかにかかっています。
最低賃金の上昇や人材確保の難しさが続く中、労務管理を財務の視点で見直すことは、企業体質の強化につながります。「人」と「お金」の健全なバランスを築く事が必要です。
マネジスタ湘南社労士事務所では財務、労務に関する相談を承ります。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



