職場のハラスメント撲滅月間に学ぶ:判例と企業事例から考える職場の守り方 ~第1部:ハラスメントの実態と裁判例から見える企業の責任~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
9月30日に厚生労働省より公表された「令和7年版 労働経済の分析」を前回に続き取り上げます。
はじめに
前回のコラムでは、労働力不足が約140万人に達している一方で、約220万人の就業希望者の他に500万人程度の潜在的労働力が存在し、条件次第で就業可能であることをお話しました。
今回はその続編として、「働く意思がない人」はなぜ働かないのか、そして企業はどうすれば彼らの「働く気持ち」を引き出せるのかを考察します。
働かない理由─「働く意思がない」の背景とは
総務省「労働力調査(詳細集計)」によれば、20歳〜59歳のうち「働いておらず、働く意思もない人」は約500万人と推計されます。
そのような層は単なる「働きたくない」ではなく、制度・環境・職場の選択肢が限られていることによる「働けない」状態とも言えます。特に「適当な仕事がない」と感じている層は、職業選択の幅や職場環境の改善によって就業可能性が高まると考えられます。
Z世代の就業観─「働く」ことの価値観の変化
令和7年版「労働経済の分析」では、若年層の就業意識の変化が取り上げられています。Z世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)は、従来の「安定・年功・長期雇用」よりも、以下の価値観を重視する傾向があります。
・自己成長、スキルアップ
・柔軟な働き方(時間・場所)
・職場の雰囲気、心理的安全性
・社会貢献、パーパス志向
このような価値観の変化は、企業の採用戦略に大きな影響を与えています。
企業が取るべき対策
では、企業はどのように対策すべきか。以下に対策例を挙げます。
1.柔軟な雇用設計
時短・テレワーク・副業・短時間正社員など多様な働き方の制度化
2.職務設計の見直し
業務の細分化と職務分離で「できる仕事」を増やす
3.スキルアップ支援
短期教育やOJTでスキルギャップを埋める
4.処遇と評価の再設計
年齢や勤続年数ではなくスキル・成果に基づく処遇へ移行
5.DX・AI導入による業務軽減
定型作業の自動化で現場の負担を削減、離職抑止と就業促進を図る
これらの取り組みはZ世代だけでなく、働く意思がないとされる層にも有効です。
特に「適当な仕事がない」と感じている人に対しては、職務設計の見直しや職場の受け入れ体制の改善が鍵となります。
(事例)DXで働きやすさを高める―介護業のDX導入例
介護現場は人手不足・業務過多が顕著であり、AIやICT導入実績が増えています。
1.DXによる業務負荷軽減例
・記録業務の自動化(音声入力・テンプレ化)
現場での口述をその場で音声→テキスト化、定型フォーマットへ自動反映することで「記録に費やす時間」を削減。
・見守りセンサーと転倒検知の導入
センサーが夜間見回り頻度を適正化、異常時のみ通知する事で夜勤負荷を軽減。
・業務スケジューリングと情報共有のクラウド化
シフト調整や引継を一元管理し無駄な問い合わせや二重作業を削減。
2.介護現場で見られるDX化の効果
・事務作業時間の短縮によりケア時間が増加
・身体的負担の低減が離職抑止に寄与し、採用・教育コストの削減に
・業務の見える化により新人教育が効率化され、早期戦力化が可能に
これらの効果は施設規模や導入の仕方で差が出るため、現場での導入支援と段階的な運用設計が重要になります。
まとめ
労働力不足という課題は、単に「人を増やす」だけでは解決しません。
潜在的労働力を掘り起こす取り組みと、DXによる業務効率化を「両輪」として回すことが現実的な道筋です。特に介護現場のように業務負荷が高い分野では、技術導入が職員の働きやすさとサービス水準の双方を高める有効策になります。
マネジスタ湘南社労士事務所では労務や業務効率化に関する相談を承ります。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



