【もしもシリーズ第1回】支援型リーダーは組織を救えるか?~小羅 衛門CEOの場合~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
9月30日に厚生労働省より「令和7年版 労働経済の分析」が公表されました。
今回は労働経済の分析を2部制でコラムに取り上げます。
はじめに:「労働経済の分析」とは
厚生労働省が公表している「労働経済の分析」は、雇用・賃金・労働時間などを統計と政策の観点から総合的に分析する白書です。令和7年版は「労働力供給制約の下での持続的な経済成長」をテーマに、人口減少と人手不足の下でいかに働く人を確保し、生産性を高めるかを検討しています。
令和7年版のポイント
令和7年版の分析では、日本の労働市場が直面する構造的な課題を指摘しています。
名目GDPは初めて600兆円を超え景気は緩やかな回復を続ける一方、現場では人手不足が続き、特に医療・福祉・建設・運輸などの社会インフラ職では、慢性的な人手不足が経済活動の制約要因となっています。
労働経済の現状
・有効求人倍率は1.26倍と高水準
求人数は増加傾向にあるものの、求職者数が追いつかず採用難が常態化
・就業者数は過去最高
高齢者や女性の労働参加が進み労働力人口は増加しているが、
供給制約は依然厳しい
・名目賃金は上昇するが実質賃金は停滞
春闘では高水準の賃上げが実現したが、物価上昇により実質賃金は伸び悩み
労働力不足の状況
令和7年版白書は、医療・保健・福祉・保安・運輸・建設・接客・販売・調理といった「社会インフラを支える職業群」に注目し、職業別の求人・就業のギャップを積み上げる手法で需給差を推計しています。これにより、未充足求人数の合計が約140万人規模と示されています。
潜在的労働力による補完可能性
では、労働力不足を埋めるだけの人が本当にいないのか──
総務省の「労働力調査詳細集計」4~6月期では、就業希望者(就業を希望しているが求職活動をしていない者)は約221万人と推計しています。この中には出産や介護、健康上の理由も含まれているので、就業希望者だけで労働力不足を埋められないかもしれません。
| 求職活動していない理由 | 概算数 |
|---|---|
| 適当な仕事がありそうにない | 83万人 |
| 出産・育児のため | 28万人 |
| 介護・看護のため | 28万人 |
| 健康上の理由のため | 50万人 |
| その他(資格取得等) | 42万人 |
しかし、総務省「労働力調査(詳細集計)令和7年4〜6月期」によれば20歳〜59歳のうち「働いておらず働く意思がない」層は約500万人と推計されています。
この中には条件次第で就業可能な人も含まれており、就業希望者とは別に潜在的労働力として評価できるとも言えます。
潜在的労働力で埋めることの限界とAI・DXの必要性
潜在層の掘り起こしだけでは、
・スキルのミスマッチ
・地域雇用の流動性の限界
・健康や介護といったライフ制約
といった課題が残ります。
そこで白書では、人手不足の補完策としてデジタル化・AI活用を重要な施策の一つに位置づけています。AI・RPA等で定型業務を自動化し生産性を引き上げることは、限られた人員でサービス水準を維持・向上させるために不可欠です。
まとめ
労働力不足は「人がいない」のではなく、「人を活かせていない」ことに起因する側面もあります。潜在的労働力の活用は人手不足を解消する可能性を秘めています。
但し、スキルや生活制約といった課題も残るため、AI・DXによる業務効率化との「両輪」で対策を講じる必要があります。
第2部では、「働く意思がない人」をどうやって働く気持ちにさせるか──
現代の就業観を踏まえた対策などについて考察したいと思います。



