週20時間勤務で厚生年金加入へ~中小企業が整備すべきこと~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営



 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
年金制度改正により、「年収106万円の壁」が2025年度中に解消される見通しとなりました。以前コラムで取り上げましたが、改めて「106万円の壁」撤廃に伴う影響、対策などについて取り上げます。

はじめに:「106万円の壁」とは?

 これまで多くのパートタイマーが「106万円の壁」を意識し、勤務時間を抑えてきました。月収88,000円未満となるよう勤務時間を調整し、社会保険加入を回避する運用が一般的でした。
 しかし年金制度の改正により、この年収の「壁」が事実上撤廃され、週20時間以上勤務するパートタイマーは原則として社会保険加入が必要となります。
段階的にですが企業規模基準も廃止されるため、影響は広範囲にわたります。

改正による今後の働き方の変化

 これまでの制度では、パートタイマーは106万円未満となるよう勤務時間を調整し扶養の範囲内で勤務するケースが多く見られました。
 今回の改定により週20時間以上で社会保険加入が必要となるため、勤務時間を週19.5時間にする、賃金次第では大幅に勤務時間を削減、といったケースも想定され、パートタイマーの働き方が大きく変わる事が予想されます。

企業が直面する主な影響

  • 社会保険料の企業負担が増加(約15%)
  • パートの採用・定着戦略の見直しが必要
  • 労働時間の設計と契約管理の複雑化

企業が整備すべき項目

制度・ルール内容目的
社会保険加入ガイドライン勤務時間、月収などの基準を明文化社内の公平性の確保
パートタイマー就業規則社会保険加入後の手当、待遇などを明記定着率向上とトラブル防止
人件費シミュレーション賃上げ・社会保険料負担の影響を試算収益計画、財務管理へ反映
説明会の開催社会保険加入対象者への制度説明不安解消と合意の形成

労務管理で注意すべきポイント

項目注意点
勤務時間社会保険加入回避のため週19.5時間勤務の個別調整が増えると不公平感が生じやすい。ルール化と説明が必要
契約更新対象者には契約書や労働条件通知書などで加入の有無・開始時期・待遇変更を明記。口頭説明もセットで行う
社内ルール厚生年金加入基準・待遇・手当のルールを明文化し運用を統一。例外対応はトラブルの種
従業員への説明手取り減少の不安に対し将来の年金受給メリットなどを説明。理解度の向上と同意の形成が定着率に影響

まとめ:人材確保と組織力強化のチャンスに

今回の改正により、

  • 社会保険加入によるコスト増は、長期的な人材投資と捉える
  • パートタイマーの位置付けを補助人員から持続的な戦力と意識を変える
  • 属人化した運用を排除し、誰もが納得できるルールと説明体制を整える

などの対応が必要となります。
 企業負担は増えますが「人を活かす組織」へ転換のチャンスでもあります。
そのためには、従業員への説明や支援、就業規則の見直しといった対応とともに、「長く働ける職場」をどう築くかが鍵になります。

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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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