最低賃金改定と業務改善助成金の拡充:中小企業が備えるべき対応

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:労務・人事管理


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は、9月5日に発表された最低賃金改定と業務改善助成金についてお話しします。

最低賃金の改定

 9月5日に厚生労働省より令和7年度の最低賃金改定が発表されました。
全国加重平均は1,121円(前年比+66円)と過去最大の引上げ幅となり、政府の掲げる「全国平均1,500円」への道筋が鮮明になってきました。
 神奈川県は最低賃金が1,225円(前年比+63円)に改定され、発効日は10月4日です。これは東京都に次ぐ高水準であり、県内中小企業にとって賃金体系の見直しが急務となります。

特徴と背景

  • 全国平均の引上げ率は6.3%、物価上昇と賃上げのバランスを意識した水準
  • 政府は「全国平均1,500円」を目標に掲げており、今回の改定はその布石
  • Cグループは約8%の引上げが行われ、地域間格差の是正も進展

見直しを怠った場合のデメリット

 最低賃金改定に対応しない、あるいは対応が遅れることには以下のリスクがあります。
・法令違反による罰則
 労働基準監督署の指導対象となり、悪質な場合は企業名公表や刑事罰の可能性
 (50万円以下または30万円以下の罰金)
・従業員の離職・士気低下
 賃上げが行われない場合は人材流出のリスクが高まることに
・採用難の加速
 求人票の時給が最低賃金未満では掲載不可、採用活動にも直接的な影響

業務改善助成金の拡充

 最低賃金の引上げに伴い、厚生労働省は業務改善助成金を令和7年9月5日に拡充しました。
変更点を以下に整理します。

主な変更ポイント

項目従来変更内容
対象事業所地域別最低賃金との差額が50円以内改定後の最低賃金未満まで対象範囲を拡大
賃金引上げ計画事前提出必須改定日前日までに賃上げ済なら提出不要
対象期間賃上げ後の申請不可賃上げ後でも申請可能(条件あり)
必要書類計画書・見積書・賃金台帳など賃上げ結果・事業実施計画などに簡素化

実務上の注意点

  • 賃金引上げは地域別最低賃金の改定日前日までに実施する必要あり
  • 交付決定前に設備導入した場合は助成対象外
  • 勤務実績がない従業員は助成対象にならない可能性あり
  • 申請は年度内1回限り、予算枠に達すると早期終了の可能性も

まとめ:制度を使いこなすには専門家の力を

 最低賃金改定は単なるコスト増ではなく、企業の人への向き合い方が問われます。
また、業務改善助成金は生産性向上のチャンスに変えるための制度です。
 ただし、申請には複雑な要件や書類準備が伴い、専門家のサポートが不可欠です。社労士や中小企業診断士などの支援を受けることで、制度を活用できる幅が広がります。

 マネジスタ湘南社労士事務所では助成金に関する相談を承ります。
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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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