【第3回】銀行員から見た「お金を貸したい企業」の特徴 ~制度整備が信用力を支える~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:財務


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は「銀行員から見たお金を貸したい企業」の第3回、制度整備についてお話します。

はじめに

 前回のコラムでは、信用力は「構造的に育てるもの」であり、財務の見せ方・経営者の語る力・会社の空気感などが複合的に作用することを整理しました。
 今回はその中で企業のベースとなる「制度整備」に焦点を当てます。
銀行員は、制度の整備度合いから企業のガバナンスや組織統率状況などを評価しています。

制度は組織統制の源泉

 制度の整備は、企業の組織運営や統制力を示す重要な要素です。
主にガバナンスを見ますが、労務管理や人材定着に影響を与える人事制度も重要になります。

1.ガバナンス:意思決定の透明性
 経営の透明性と、組織としての意思決定力が問われます。

  • 経営判断のプロセスが明文化されているか
  • 責任の所在や承認フローが明確か
  • トラブル時の対応方針が定められているか

2.労務管理:トラブル予防と運用力
 「制度がある」だけでなく「運用されているか」が重要です。

  • 就業規則・勤怠管理・残業対応が整備されているか
  • 書面化されたルールが現場で運用されているか
  • 労使トラブルへの備えがあるか

3.人事制度:納得感ある報酬設計
 人事制度は、企業の人への向き合い方を映す鏡です。

  • 昇給・賞与・評価の仕組みが明確か
  • 社員が制度を理解し、納得しているか

中小企業でもできる制度整備のステップ

 制度整備は、完璧を目指す必要はありません。
まずは以下の「3ステップ」を意識することが重要です。

ステップ内容目的
明文化就業規則・評価基準・報酬体系などを文書化社内への周知を図る
運用制度が現場で機能しているかを確認社内への浸透を図る
見える化外部に説明できる形で整理する社内外への認識を図る

制度は「整っていること」より「整えている姿勢」が重要です。

制度と財務を連動させる設計の工夫

 制度は財務と連動することで、組織運営の効果や合理性を高めます。
たとえば以下のような設計です。

  • 利益率を部門KPIと連動させる
  • 賞与原資をEBITDAの一定割合で設計する
  • 教育投資のROIを管理し、成果を可視化する


 制度と財務が連動している企業は、運用が体系的に整備されていると評価されます。

まとめ:制度は「信用の設計図」

 制度整備は企業の内部統制を支えるだけでなく、「組織的に運用されているか」を判断する裏付けになります。
 中小企業であっても制度を整える姿勢と財務との連動を意識することで、組織運営の合理的評価を得やすくなります。
・ガバナンス、労務、人事の整備
・明文化→運用→見える化のステップ
・財務との連動設計

 これらを意識することで制度運用は機能し対外的にも説得力が増します。
次回は「銀行との関係性をどう育てるか」を掘り下げていきます。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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