【第2回】銀行員から見た「お金を貸したい企業」の特徴 ~信用力の設計:中小企業が取り組むべき5つの打ち手~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:財務


はじめに

 前回のコラムでは、銀行員が企業を見る6つの視点を紹介しました。
財務の健全性だけでなく、経営姿勢や制度整備や現場の雰囲気など、企業の信用力を多面的に評価することを説明しました。
では、その信用力はどうすれば高められるのか?
今回は、中小企業が実践できる「信用力の設計」の具体的な打ち手を5つの観点から整理します。

信用力の設計に向けて取り組むべき5つの打ち手

 では信用力の設計に向けた5つの打ち手を説明します。

1.財務の「見せ方」を設計する

 与信判断において財務内容は重要な要素ですが、決算書はあくまで過去の実績を示したものに過ぎません。
銀行が本当に見たいのは「これからどうするか」です。
財務の伝え方ひとつで印象は大きく変わります。

  • 事業計画書には、数字だけでなくビジョンを伝える
  • 資金使途は「何にどう使うか」を明確に

2.経営者の「語る力」を磨く

 重要なのは、数字に明るくビジョンを論理的に語れる力です
経営者の言葉が、企業の信用をつくります。

  • 感覚的な説明ではなく、「根拠ある意思決定」が求められる
  • 経営者が数字を使って未来を語れる企業は、規模に関係なく信用される

3.制度整備の優先順位をつける

 制度の整備は、企業の地力を示します。
すべてを一度に整える必要はありません、整える順番が鍵になります。
まずは「明文化」と「運用の仕組み」から始めましょう。

  • 社内ルールが明文化され、運用されているかが重要
  • 制度と財務を連動させることで、制度の実現可能性を高める

4.会社の雰囲気を整える

 銀行員は、訪問時に会社の雰囲気や従業員の応対を見ています。
会社の雰囲気は、企業文化やマネジメントの質を映す鏡です。

  • 挨拶・整理整頓は企業文化の表れ
  • 従業員の態度は制度設計や企業理念の浸透度を示す

5. 取引先、銀行との関係性を育てる

 資金調達は交渉ではなく「信頼構築」です。
銀行員は、日々のやり取りの中で企業の姿勢を見ています。

  • 面談時の対応、適時適切な報告と情報開示
  • 信頼は日々の積み重ね

まとめ:信用力は「構造的に育てる」もの

 信用力は、自然に生まれるものではありません。
企業が意識して設計し、育てていくものです。
・財務の見せ方
・経営者の語る力
・制度整備の順番
・会社の雰囲気
・取引先、銀行との関係

 これらを意識することで、信用できる企業として評価される土台が整います。
次回は、「制度整備と信用力との関係」について深掘りしていきます。

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江崎充豊
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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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