財務から見る働き方改革 ~固定費構造の転換と人的資本の活性化~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:労務・人事管理


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
少し前からよく聞く「働き方改革」、今回は財務の視点から見た「働き方改革」についてお話したいと思います。

働き方改革は「財務構造改革」

 「働き方改革」と聞くと、労務管理や人事制度の話と捉えられがちです。しかし、企業経営全体で見れば、働き方改革は財務体質そのものを変える契機となります。
 特に中堅中小企業においては、固定費の見直し・資本効率の向上・人的資本の再配置といった財務的課題と密接に関係しています。
このコラムでは、働き方改革を「財務構造の再設計」として捉え、制度設計と財務設計の連動による経営改善の可能性を探ります。

固定費構造の転換:時間から成果へ

1.時間依存型コストの限界
 従来の「時間=人件費」モデルでは、業績変動に対応しづらく、固定費比率が高止まりする傾向があります。
働き方改革により、時間依存型の固定費構造を成果連動型へ転換することが可能です。

2.財務的なメリット

  • フレックス・リモート導入によるオフィスコスト削減
  • 業務委託・副業人材活用による変動費化
  • 成果主義の導入による報酬の最適配分と利益率改善

3.人的資本の再配置と資本効率の向上
 働き方改革は「人材ポートフォリオ」の再設計。
多様な働き方を認めることで、社内外の人的資本を最適配置でき、財務的には資本効率(ROA・ROIC)の改善につながります。

4.具体的な施策例

施策財務への影響
社内副業制度スキルの社内循環→教育コスト削減
外部人材との協業固定人件費の変動費化→資本効率向上
ジョブ型雇用適材適所→生産性向上・利益率改善

5.財務指標への影響

  • ROIC(投下資本利益率)、EBITDA:固定費構造の見直しにより改善
  • キャッシュフロー:設備投資・採用費の最適化でフリーCF増加

6.KPI設計のポイント
 働き方改革の成果は、財務指標で可視化することが重要です。
「人事KPI」と「財務KPI」を連動させる設計がポイントとなります。

事例:サイボウズの人事制度

 サイボウズはかつて離職率が高く、2005年には年間28%に達していました。社員の多様なライフスタイルに対応できない制度が原因でした。
そこで、「チームの生産性」と「メンバーの幸福」がバランスする状態を目指し、様々な人事制度を展開しました。

  1. 働き方マッチング:勤務場所・業務内容等の希望に対して勤務条件を提示
  2. 復業の容認:社外活動を通じたスキルアップ
  3. 育児・介護との両立支援:最長6年の育児休暇制度や子連れ出勤制度 など

 その結果、離職率は大幅に低下し、採用関連コスト削減に加え生産性向上による利益率改善に繋がりました。

まとめ

 働き方改革は単なる労務対応ではなく財務構造の再設計であり、人的資本を活かした資本効率の改善戦略です。
「人の働き方」を変えることは、「企業の数字」を変えること。
制度設計と財務設計を連動させることで、企業は持続可能な成長への道を拓くことができます。

 マネジスタ湘南社労士では、人事制度や財務に関する相談を承ります。
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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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