利益とキャッシュフローの違いとは? 「黒字倒産」を防ぐために知っておきたいキャッシュフローの重要性

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:財務


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は利益とキャッシュフローについてお話したいと思います。

はじめに:利益が出ているのに、なぜ資金が足りない?

 「今期は利益が出ているはずなのに、なぜ資金繰りが苦しいのか?」
これは多くの経営者が一度は直面する疑問です。実際、決算書上は黒字でも、資金繰りが回らずに事業継続が困難になる「黒字倒産」は珍しくありません。
 その原因のひとつが、「利益」と「キャッシュフロー(現金収支)」の違いを正しく理解していないことにあります。

利益とキャッシュフローの違いは?

利益とは?

 利益とは、会計上の「収益 − 費用」によって算出される数値です。
会計原則に基づき発生主義(アクルーアルベース)で計上されるため、実際に現金が動いていなくても「売上」や「費用」として認識されます。

キャッシュフローとは?

 キャッシュフローとは、「現金入金―現金支出」のこと。
資金繰りや支払能力を判断するうえで、最も重要な指標です。
キャッシュは実際に使えるお金であり、利益とは異なるタイミングで増減します。

 利益とキャッシュフローの違いを例にあげてみます。
(例)3月に50万円で仕入れした商品を3月に100万円で販売。
3月末に仕入代金全額を支払、4月末に売上全額入金の場合。

時期利益(会計上)キャッシュフロー(現金収支)
3月50万円(売上100-仕入50)▲50万円(仕入)
4月0万円100万円(売上)

 利益とキャッシュフローの違いを言葉で示すと以下のようになります。

項目利益(会計上)キャッシュフロー(現金収支)
定義売上 − 費用(発生主義)入金 – 支出(現金主義)
計上タイミング売上や費用が発生した時点実際に現金が動いた時点

利益とキャッシュフローのズレが生む「黒字倒産」

 利益が出ていても、キャッシュが不足すれば、支払いができず倒産する可能性があります。これが「黒字倒産」です。
 キャッシュが不足する要因は例えば以下のようなケースです。

  • 売上は延びているが、売掛金の回収が遅れている
  • 設備投資や借入返済でキャッシュが流出している
  • 在庫が増えて、資金が商品に滞留している

経営者が押さえるべきポイント

1. 利益だけでなく、キャッシュフローを毎月チェック
・月次資金繰り表を作成し、入出金のタイミングを可視化
・売掛金の回収サイトを短縮する交渉
・支払いサイトの調整(仕入先との関係性も考慮)
2. 評価制度にもキャッシュフローの視点を織り込む
・キャッシュフロー改善に貢献した社員(在庫削減、前受金獲得など)を評価
・利益だけでなく、資金繰りへの意識を組織全体に浸透させる

まとめ:利益は「理論」、キャッシュは「現実」

 利益は「会計上の数字」、キャッシュは「実態の数字」で「会社の血液」です。
黒字でもキャッシュが回らなければ企業は倒産します。
「利益が出ているから安心」ではなく、「キャッシュが回っているか?」を常に意識することが重要です。

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江崎充豊
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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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