趣味とビジネスの交差点 ~日本酒業界の財務・雇用を考える~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
私はお酒が好きですが、その中でビールと日本酒が特に大好きです。
今回は日本酒業界をビジネスの視点からお話したいと思います。

日本酒業界の動向

 清酒販売量は1973年の177klをピークに減少傾向が続き、2022年は41klとピークの約4分の1にまで縮小しています。
一方で、純米吟醸など高品質な「特定名称酒」の出荷量は増加傾向にあり、「量より質」へのシフトが進んでいます。
また、海外輸出も好調で、特にアジア圏や欧米での「SAKE」人気が高まっています。
(海外におけるSAKE市場の動向)
アメリカ:輸出量、金額とも海外最大市場。現地製造拠点設立が進む
ヨーロッパ:小規模な酒蔵の立ち上げや現地の食文化との融合が進展
中国、香港:輸出単価が高くプレミアムSAKEの需要が高い

最近では異業種やスタートアップ、外資が日本酒業界に参入する動きも見られます。

日本酒業界の課題

 日本酒業界の最大の課題は「後継者不足」と「日本市場の縮小」です。
全国約1,400の酒蔵のうち3割以上が後継者未定とされ、特に地方の小規模な酒蔵では廃業の危機が現実味を帯びています。
 また、日本のお酒の市場の縮小にどう対応するかも課題となっています。

財務面の課題と対策

 多くの酒蔵が中小零細企業であり、原材料費やエネルギーコストの高騰に対して価格転嫁が難しい構造にあります。
特に「スペック重視」の価格設定(精米歩合や米の品種など)のため、それ以外の付加価値を価格に反映しづらいという課題があります。
 対策としては以下が挙げられます。
・輸出によるトップライン(売上)の押し上げ
・高価格帯市場(プレミアムSAKE)参入による採算改善
・クラウドファンディングやM&Aによる資金調達と事業継続
・地域金融機関との連携による経営支援

雇用面の課題と対策

 酒造りは長時間労働と安全面にリスクがあります。
長時間労働は、酒造りが冬季に集中する上、一定年数以上最低製造量を下回ると製造免許取消となる事から酒造りを優先させてきたことなども影響していると思います。
 安全面では酒造業は歴史が古く伝統的な手法が継承されていることもあり、良くも悪くも他業種を参考にすることがなかったことも影響しているかもしれません。
 また、他業種と同様に人材確保にも課題があります。
対策としては以下が挙げられます。
・1年単位の変形労働時間制の導入
・安全衛生対策の強化(ハーネス・ヘルメット着用など)
・外部人材の登用や女性・外国人杜氏の育成支援
・人事評価制度の整備

まとめ

 日本酒業界は「伝統産業」であると同時に、「グローバルな文化資産」でもあります。
最近では伝統の枠組みにとらわれずイノベーションを生み出そうとするスタートアップや海外企業も現れてきます。
 その中で伝統を守る・伝統に裏付けられた技術で新しい味を作るには、環境変化にしなやかに対応するための体制や仕組み作りが必要となります。

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江崎充豊
専門家

江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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