利益が出ていても安心できない? 今こそ見直したい「キャッシュフロー経営」

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は「令和の米騒動」で世間を騒がせている備蓄米を企業に置き換えて、企業の備蓄戦略についてお話したいと思います。
備蓄米の現状
日本の米市場は深刻な供給不足に直面しています。異常気象や生産減少の影響を受け価格が高騰。政府は備蓄米約90万トンのうち約60万トンの放出を決定し価格抑制を試みています。
こうした状況は、米の備蓄戦略だけでなく企業の備蓄戦略にも通じる部分があります。企業も在庫・人材を確保し不確実性への備えをしていますが、その戦略には財務リスクと密接に関係します。今回は、米の備蓄戦略を企業に置き換えて財務的な視点から考えてみたいと思います。
企業の備蓄戦略の代表的なケース
企業は供給リスクを回避するため、例えば以下のような戦略をとっています。
製造業:原材料の確保
半導体やレアメタルなど、生産安定化のため供給不安定な資源確保をしています。しかし、大量購入は資金負担が増大するため、適正在庫と資金の管理が求められます。
小売業:商品在庫の管理
食品や日用品の価格変動リスクを考慮し、安価なタイミングで仕入を行うようにしています。ただし、需要予測を誤ると不良在庫となり、損益に影響します。
エネルギー業界:予備資源の確保
電力会社は燃料価格の変動に備え、長期契約でLNGなどを安価に確保するようにしています。安定的な確保に繋がりますが、資金負担が大きくなります。
医薬品・ヘルスケア業界:緊急対応のための備蓄
感染症流行に備え、ワクチンや治療薬を備蓄しています。使用期限経過による廃棄リスクを避けるため、共同備蓄などによる在庫コントロールが必要となります。
人材確保のケース
企業の備蓄戦略は物資だけではなく、労働力の安定確保にも同じ事が言えます。
介護・医療業界:介護・医療人材の確保
高齢化が進む日本では介護・医療業界の人手不足が課題となっています。外国人技能実習生の受け入れや定着促進が戦略の一つとなります。
建設業:職人や技能労働者の確保
建設業も人手不足であり、労務費高騰への対応や工期に合わせた職人などの確保が必要となります。特に大型プロジェクトを抱える建設業者は労働者の確保が重要な課題となります。
IT業界:IT人材の確保
IT人材は世界的に不足しており、アメリカなど様々な国がSTEM分野の人材育成を国策として取り組んでいます。国内外を問わず様々な企業がIT人材の確保に努めており、その中で人材を確保するには契約形態の多様化や報酬体系の見直しなどが必要となります。
備蓄戦略に伴う財務上の課題
企業が在庫・人材確保を行う際に直面する財務課題として、以下の点が挙げられます。
1.資金の圧迫
原料や資材の大量購入などにより、キャッシュポジションやキャッシュフローが悪化します。
2.在庫リスク
市場価格が下がると利益率が低下する上、在庫不良化による回収不能リスクが高まります。
3.保管コストの増加
倉庫管理費や品質維持のためのコストが収益を圧迫します。
4.財務指標の悪化
在庫増加により在庫回転率が低下し、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)などの財務指標に影響を与えます。
財務リスクを抑える対策
備蓄戦略による財務負担を抑えるためには、以下の対策が考えられます。
1.在庫管理手法の導入
データ分析を活用し、市場変動に対応できる最適な在庫量を設定
2.ファイナンス戦略の見直しと最適化
運転資金を銀行融資やファクタリング等を活用し資金を確保
3.共同備蓄の推進
業界団体や政府との協力による共同備蓄でコスト負担を軽減
4.財務指標を意識した運用
財務状況に応じて在庫を調整しキャッシュフローや財務指標への影響をコントロール
まとめ
事業を円滑に運営するには在庫・人材の確保も必要である一方、財務リスクも検討しなければなりません。在庫・人材管理の目的は単なる「保有」ではなく、安定的な供給と財務バランスを考え両立することにあります。政府の米備蓄戦略を参考に、企業の在庫・人材戦略を財務戦略と結びつけて考えてみてはいかがでしょうか。
マネジスタ湘南社労士事務所では財務に関する相談を承っています。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



