利益が出ていても安心できない? 今こそ見直したい「キャッシュフロー経営」
こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は、中小企業庁が毎年発表している「中小企業白書」をもとに、中小企業の現状と今後の対策について、第1部は「中小企業白書から読み解く現状と課題」、第2部は「財務の視点から考える対応策」についてお話したいと思います。
第1部:中小企業白書から読み解く現状と課題
1.中小企業の現状
中小企業庁が発表した2024年度「中小企業白書」によると、日本の中小企業は依然として厳しい経営環境に直面しています。
新型コロナウイルスにより大きく落ち込んだ2020年以降、回復傾向にあった中小企業の景況判断DIは回復に足踏みの傾向が続き売上の伸びが鈍化。特に小規模企業では資金繰りの厳しさが増しています。業種別に見ると、
- 製造業は原材料費の高騰によりコスト負担が重く、価格転嫁の難しさが利益を圧迫
- 小売業・飲食業は消費者の節約志向により売上が回復せず、価格競争が激化
- サービス業は人手不足の影響を受け、業務の効率化が課題
業種ごとに課題は異なるものの、共通するのは「利益確保が難しくなっていること」です。
2.中小企業が直面する問題点
(1)物価高とコスト管理
物価上昇もあり仕入コストが上昇しています。特に価格転嫁が難しい業種では利益率の低下が顕著となっています。
(2)人手不足と採用難
労働力の不足は産業全体の共通課題ですが、特に建設業や製造業で技術者の確保が困難になっています。このように人手不足が、賃上げのプレッシャーと相まって経営を圧迫しています。
(3)賃上げによる企業の収益への影響
最低賃金の上昇に伴い、中小企業の賃上げ率は過去30年で最高水準となりました。しかし、人件費増加を吸収できるだけの収益構造が整っていない企業も多く、賃上げが負担となるケースも目立っています。
(4)金利上昇による資金調達の変化
2024年度の借入金利水準判断DIを見ると、金利上昇を実感している企業が増加し、資金調達環境が厳しくなってきています。そのため資金調達の多様化を考える企業も増えています。
(5)事業承継の課題
中小企業の後継者不在率は50%を超えており、事業承継の問題は依然として解決されていません。特に地方企業では廃業を選択せざるを得ないケースが増えており、地域経済への影響も懸念されます。
3.現状を改善するための対策
(1)DX・GXの活用
デジタル化や環境配慮型経営に移行することで、業務効率化とコスト削減を進めることが求められています。
- 業務管理のデジタル化(在庫管理、経理のクラウド化)
- 省エネ投資によるコスト削減(GX推進で補助金活用)
(2)事業承継対策やM&A活用
後継者が不在の企業は、M&Aを検討することで事業継続の可能性を高められます。近年は中堅企業が買収を積極的に進めるケースも増えており、M&Aを活用することで企業の存続が可能になります。
(3)資金調達の多様化
銀行融資に頼るだけでなく、補助金や助成金、クラウドファンディング、VC(ベンチャーキャピタル)を活用することで、資金確保を効率化できます。
4.第1部まとめ
中小企業は物価高や人手不足、資金調達の厳しさといった問題に直面しています。
政府の支援策やDX活用などの施策を適用し、企業の経営を強化することが重要です。
今後は、企業の財務戦略を軸に、持続的な成長のための対応策を考えていく必要があります。2部ではその対応策についてお話したいと思います。



