「しごとより、いのち」 ~11月は過重労働解消キャンペーン月間~
こんにちは、湘南マネジメントサポート社労士事務所(湘南マネサポ)です。
今回は年収の壁と助成金についてお話をしたいと思います。
年収130万円の壁
所得税や社会保険は年収が一定額以下の場合は非課税、もしくは適用除外となっています。課税・社会保険適用対象となるにはさまざまな年収の基準があり「年収の壁」と言われていますが、その一つが「年収130万円の壁」です。
年収130万円を超えると扶養から外れ、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が義務付けられます。そのため社会保険料が新たに発生し手取り収入が減少することから、多くの労働者が「130万円の壁」を意識するようになります。この「壁」は、働き手の意欲や選択肢を制限し、結果的に労働力の活用を妨げる一因となっています。
130万円以外にもさまざまな収入の壁があります。例えば、
「103万円の壁」(注):所得税の支払義務が生じ所得税控除が受けられなくなる
(注)2025年3月に最大160万円に引き上げる予算案が衆院通過
「106万円の壁」: 短時間労働者が一定の条件を満たした場合に社会保険が適用
これらの壁を超えると手取りが少なくなる可能性があるため、労働者が労働時間を調整する要因となっています。
そのような課題に対応するため、様々な助成金制度が用意されています。その一つが「キャリアアップ助成金」です。この助成金は、労働者の処遇改善や働き方改革を支援し、長期的な雇用安定を促進することを目的としています。
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(有期雇用労働者等)に対して、正社員化や処遇改善の取組を実施した企業に助成するものです。
キャリアアップ助成金には様々なコースがありますが、有期雇用労働者等を新たに社会保険適用する際の支援となるのが、「社会保険適用時処遇改善コース」です。
詳細は割愛しますが、コースによって中小企業では累計最大50万円(もしくは最大30万円)が支給されます。
また、有期雇用労働者等の社会保険適用を進める観点から、「短時間労働者労働時間延長支援コース」の新設が検討されています。
このコースは現在パブリックコメントを募集している段階ですが、労働者の労働時間の延長と賃金増加を組み合わせた取り組みを実施した企業を対象に、小規模事業者では2年間で最大75万円(中小企業は70万円)の助成金を支給する内容となっています。
詳細については厚生労働省HPをご参考ください。
(厚生労働省HP)キャリアアップ助成金助成金
助成金に活用に際し企業が気をつけるべきこと
助成金を活用するにあたり、以下の点に注意が必要です。
1.従業員への説明
キャリアアップ助成金は有期雇用労働者等が社会保険適用となる事などが条件です。従業員によっては扶養から外れ社会保険料負担が増えることになるため、従業員に丁寧に説明することが必要になります
2.助成金申請手続き
受給条件に合致している事はもちろん、計画書事前提出など様々な手続が必要となります。そのため、適切かつ正確に手続きを進める必要があります。
3.長期的視点での対応
助成金を受給するため一時的に改善するだけでは、従業員と企業双方にとって長期的にマイナスとなります。従業員定着による企業の生産性向上・事業安定に向けた事業戦略を考えると共に、従業員のスキル向上やキャリアアップを支援する取り組みを行う事も必要になります。
まとめ
年収の壁の問題をそのままにしていると労働者が定着しない・労働生産性が向上しないリスクが生じるため、企業にとっては対応が求められます。しかし、従業員を支援するための取り組みは企業側にも負担をもたらすため、その負担を軽減する一つの手段として助成金を活用することが効果的です。
助成金の適切な活用によって、労働者の満足度向上と企業の生産性向上が両立するような職場環境を実現し、より良い働き方を構築することを検討してみてはどうでしょうか。
弊所では助成金に関する手続も承ります。
お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。



