「高く・早く・安心して・静かに」は、同時に手に入らない
ハッピーハウスの真山(さのやま)です。
ここまで3回、売る理由・優先順位・心構えの話をしてきました。「そんなに悠長に構えていられない」と思われた方もいるかもしれません。
今日は、その整理をしないまま動いた結果、どうなったかという話をします。実際にあったご相談です。
※以下は特定の状況での一例です。金額や条件は、物件やご事情によって大きく変わります。
■ 相場が上がっていく実家を前に
60代後半の男性でした。相続した実家を、売ろうか迷っておられました。
相続してから、すでに10年以上。その間に近くへ新しい路線が通り、相場が上がっていました。「売るか、もう少し待つか」と心が揺れる。無理もない状況です。
ただ、売る目的は「ぼんやり老後資金になれば」という程度でした。売る意思も、固まってはいませんでした。
ここが分かれ道だったと、今でも思います。
■ 6,000万円の話が来た
そんなとき、ある業者から買取の話が舞い込みます。金額は6,000万円。
決して悪い話ではありませんでした。ところが「もっと上がるかもしれない」という気持ちが働きます。目的が定まっていないと、人は欲のほうに引っ張られます。判断の基準がないからです。
結局、その話は流れました。
■ 後日、もうその金額では無理だった
しばらくして、あらためてその業者に頼んでみました。しかし、もうその金額では買えないと言われます。
別の業者にも当たりました。すると、土地の条件から想定していた売り方ができないことが分かり、実勢はおよそ4,000万円と判明したのです。
差額は、2,000万円でした。
■ 何が悪かったのか
この方は、判断を誤ったのでしょうか。私は、そうは思いません。
判断する軸を持っていなかったのです。
もし「老後資金として、いくら必要か」がはっきりしていれば。もし「高く売ることと、確実に売ることの、どちらを優先するか」を決めていれば。6,000万円という金額を前にしたとき、「これは十分だ」あるいは「これでは足りない」と、その場で判断できたはずです。
軸がないと、出てきた数字に対して「もっと上がるかも」としか反応できません。そして相場は、待てば上がるとは限らないのです。
■ 今日の結論
第1回から3回まで、遠回りに見える話を続けてきました。理由を言葉にする。優先順位を決める。焦らない。
これらは、こういう場面のためにあります。
いい話が来たとき、それがいい話だと分かるために。よくない話が来たとき、断れるように。準備は、決断のためにするものです。
売る意思が固まっていない段階でも、構いません。「もし売るなら、何のために、いくら必要か」だけは、先に考えておいてください。
次回は、相続をめぐるもっと重い話をします。売却の技術ではなく、売る前に防げたはずのことについてです。
売却の全体像をまとめて知りたい方は、拙著『不動産売却の教科書 完全版』(Kindle版)もご覧ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0HH38WDZ3
個別のご相談は、お問い合わせフォームまたはお電話でお受けしています。


