補聴器購入に失敗寸前だった話
今回は補聴器のレンタルについて考えてみたいと思います。
ここで言うレンタルとは、購入を前提とした試聴期間での貸出しのことではありません。
通常の使用を前提とした、長期間のレンタル、もしくはリース形式といったものについて考えてみます。
まず初めに、私は補聴器のレンタルについては反対の立場です。
私の考える反対理由を挙げてみます。
1.長期間使っても自分の物にならない
2.いつでも返せばよい、という安易な考えから「リハビリ」に消極的になる
3.身に着ける医療機器のため、長期間使用後の再利用はしづらい
大まかには、以上のような理由が考えられます。
まず1についてですが、当店のお客様でもこれまで3年間レンタルしてきた、という方がいらっしゃいました。
月5,000円ほど払ってきたとのことですが、5,000円×36回=¥180,000になります。
その補聴器の価格自体が両耳で20万円前後で買える器械でした。
3年前当時でも最新のモデルではなく、1世代程度型落ちのモデル。
それに合計18万円払って、結局は返却し自分の手元には何も残らないことが少々残念ですね。
そして理由2について、
やはり同じお客様ですが、レンタル期間中ほとんど片耳しか使わず、しかも必要と感じる場面だけ装着していたとのこと。
レンタル機器を拝見したところ、いわゆる「初心者向け」の設定のままになっており、聞くところによると、「自分の声の響き」が気になると言ったら、この設定になったとのこと。
調整方法として決して間違ってはいませんが、長い目で見るとそれでは理想とする聞こえに到達できません。
イヤならいつでもやめれば良い、という考え方ではやはり「本気度」が違ってきますね。
これまでにも話しましたが、補聴器は「リハビリ期間」が必要です。
徐々に低下した聞こえを、徐々に戻していく、脳に「これは何の音か?」というのを再学習させていく過程が必要なのです。
やはり購入した「自分の補聴器」であれば、役立てるためにしっかり使いこなしていこうという気概も出てくるのではないでしょうか。
そして、最後に理由3について
通常、レンタルといえば再利用するのが当たり前ですね。
レンタカーにしても、卒業式シーズンの貸衣裳にしても、返却した後はクリーニングされて別の人へ貸し出されますね。
しかし、補聴器についてはどうでしょうか?
数年間、見知らぬ誰かが耳に装着していたものを、使いたいと思うでしょうか?
貸出し試聴用の補聴器は再利用していますが、たとえ短期間とはいえ、消耗部品は交換し、クリーニングしたうえで、紫外線殺菌してから使います。
しかし1年、2年継続して貸し出されていたものを再利用するというのは少々考えにくいです。
そもそも、そこまで使ったらもうかなり型落ち品となり、しかも部品の劣化もあり得ます。
そうなると、返却されても再利用できずに廃棄となる可能性も高く、非常に無駄。
補聴器は高額なために、使用者の間口を広げたいという思いは理解できるのですが、費用対効果としてはあまり高くなく、このような形態が広まると業界の衰退を招くような気がします。
車や衣装などのように、使いたい時だけ使う。
レンタルはこのような種類の物には、大変お得な手段です。
しかし、体の一部となる補聴器においては、レンタルという手法は安易に選択しない方が無難ではないでしょうか。