クロス補聴器を販売して思う事
上の図はだいぶ極端な例となりますが、健聴者と難聴者のダイナミックレンジを比較しています。
ダイナミックレンジとは何のことか?
聞こえのダイナミックレンジとは、概略ですが、聞こえ始めの小さい音から、これ以上は不快で聞いていられないという大きい音までの範囲を言います。
健聴者の場合、0~10dB程度の音で聞こえ始めます。
聴力検査で測定するときの0dBは実は無音ではありません。
耳元で蚊が飛ぶ羽音くらいの音と捉えてもらうと良いかと思います。
そして、120dBとなるとかなり強大音となりますので、もうこれ以上は聞いているのは無理、というレベルの音となります。
図で分かる通り、健聴者の聞こえる範囲の音は非常に広いことが分かります。
ささやき声~ジェット機の音まで、それぞれ正しい音量で聞き分けることができるわけです。
では、難聴者の場合はどうでしょうか。
ここでは感音難聴(補聴器を求めて来られる方の多くは、この感音難聴です)に仮定して話します。
当然、聞こえ始めの音は健聴者に比較してだいぶ大きい音となります。
上の図の聴力例ですと、高度難聴レベルですので、聞こえ始めがおよそ80dB程度となっています。
聞こえ始めが下がった分、不快に感じる強大音も、より大きな音まで大丈夫になるのかと言うと、それはありません。
不快に感じるレベルは、健聴者とさほど変わらないのです。
そうすると、小さい音から強大音までの範囲が非常に狭くなってしまう事が見て取れるかと思います。
音の大小のニュアンスがかなり変わって来てしまいます。
小さい音から音量を上げると、いきなり大きくなりすぎてしまうということになりかねません。
補聴器と集音器の決定的な違い
そこで、補聴器では小さい音が入ってきたときの音量、大きい音が入ってきたときの音量を別々に処理します。
小さい音に対する増幅度は大きく、大きい音に対する増幅度は小さく、そして強大音は圧縮して抑える。
難聴者の狭くなってしまったダイナミックレンジに、会話を快適レベルで聞かせるように押し込めるような感覚です。
難聴度が進むほど、この調整は繊細さが求められてきます。
補聴器は単純に音を大きくするだけではない、実はとても繊細な調整ができる機械なのです。
この辺りも、粗悪な集音器とは一線を画す部分になります。