年末の波を読む、家族経営のキャッシュフロー術 ――銀行融資・ABL・ファクタリング、その違いと注意点
家計簿感覚でできる、冬の資金繰り。― 日繰りで整える、家族経営の台所(第10回・最終回)
年末が近づくと、家族経営ではいつも以上に不安が大きくなります。
支払いの多さ、先の見えにくさ、家計との調整──。
冬の厳しさは、経営規模に関係なく誰にとっても負荷の高い時期です。
特に12月は、
「このまま年を越して大丈夫だろうか」
という気持ちが心のどこかに芽生えやすくなります。
しかし、不安を抱えたまま年越しするのではなく、
“不安の正体を見える形にして、減らして” 新年を迎えることは十分可能です。
その中心にあるのが、日繰りです。
1. 不安の正体は「分からないこと」にある
冬の資金繰りでは、数字の難しさよりも
「実際にどうなっているのか分からないこと」が不安の原因になります。
日繰りをつけると、
その“分からない”が“分かる”に変わります。
・今の残高はどれくらいか
・今週どれだけ出る予定か
・来週どこで山場が来るか
・家計との調整はどれくらい必要か
形が見えるだけで、
不安の大きさはぐっと小さくなります。
2. 最悪のケースを書いてみると、安心が生まれる
冬は、良いシナリオよりも
“もしものケース”を先に書くほうが、不安が軽くなります。
・入金が遅れたらどうなるか
・支払いが集中した場合の残高はどうなるか
・家計から支えられるのはどの程度までか
・会社が家計を支える余裕はあるか
これをExcelでもノートでもよいので、
一度書いてみるだけで気持ちが落ち着きます。
最悪を知っておけば、
あとは上積みするだけで済むからです。
不安の影は、“見えないこと”がつくります。
見えるようにすれば、影は小さくなります。
3. 小さな準備を年内にするだけで、年越しが軽くなる
大きな対策をする必要はありません。
次のような、小さな準備で十分です。
・日繰りを直近1週間だけ見返す
・年末までの支払いを一覧にする
・来月の入金予定を並べる
・家計との補助・戻しの予定を確認する
・不安なポイントを1つだけ書き出す
この程度の確認でも、
年越しの重さはまったく違ってきます。
大切なのは、
「何も分からないまま年を越さないこと」です。
4. 家族での共有が、冬を乗り越える力になる
日繰りは、家族が同じ景色を見られるようにする道具です。
・現状がどう動いているか
・来月はどこが山場になるか
・家計との調整はどれくらい必要か
これを家族と共有することで、
気持ちの負担が半分になります。
冬の資金繰りは、
一人で抱え込むと重くなり、
家族で共有すると軽くなるものです。
最終的に冬を乗り越える力になるのは、
「事実を共有すること」にあります。
5. 日繰りは、未来へ続く“安心の基礎”になる
日繰りは難しいものではありません。
・はいる
・でる
・のこる
という家計簿と同じ構造で書けるからこそ、
自然に続き、家族に根づきます。
そして、続けていくうちに、
冬の不安は「計画」に変わり、
計画は「自信」に変わっていきます。
家族経営にとって、
この“自信”は未来を切り開く大切な力になります。
具体的な工夫は平岡商店サイトのまとめ記事で紹介しています
年末のチェックリストや、
冬を越えるための資金繰りの整え方など、実務的な内容は
平岡商店サイトのまとめ記事「経理をワクワクに」で整理しています。
「読んでみたけど分からない」「これで合っているのか不安」という場合は、
お問い合わせページから気軽にご連絡ください。
連載を終えて
冬の資金繰りは不安がつきものですが、
日繰りという“家計簿の延長”で見える化すれば、
その不安は必ず軽くなります。
今年の冬を、不安のまま年越しするのではなく、
小さく整えて、新しい年を迎えられるよう
少しでもお役に立てれば幸いです。



