会社の歴史を理解する——freeeのは後継者の“地図”になる (継ぐ人のための、数字と向き合う経営ノート:第3回)
中小企業庁から「中小PMIハンドブック」が公開されました。平岡商店にも案内が届き、改めて「M&Aは契約して終わりではない」という事実を強く感じています。
PMI(ピーエムアイ=M&A後の統合作業)は、会社の規模に関係なく必要なプロセスです。
ですが実際の現場では、
* 「引き継ぎって、何から始めたらいいの?」
* 「従業員にどう説明すれば…」
* 「取引先にはいつ、どんな風に言ったらいいの?」
* 「奥さんしか分からない仕事が多すぎる…」
という不安が尽きません。
だから今回の番外編では、
継ぐ人と、その家族(特に奥さま)の日常の延長線上にある“やさしいPMI”
についてお話しします。
1.PMIの第一歩は「暮らしの延長」にある
中小企業のPMIは、大企業のように分厚いマニュアルや専門チームがあるわけではありません。
大切なのは、もっと身近なことです。
たとえば――
毎日の会話の中で、
* この会社が守ってきた価値観
* お客様が何を喜んでくれているか
* 現場の誰がどんな性格か
* どの取引先が特に大切か
こうした情報は、意外にも **家族が一番よく知っています**。
PMIは、専門家だけがやるものではなく、家族を含めた“暮らしの延長線上の共有”から始まる のです。
2.従業員の不安に寄り添うのがPMIの中心
PMIで最も起こりやすい失敗は、
* 噂が先に広まる
* 説明が遅れて不信感が生じる
* 将来が見えずモチベーションが下がる
といった “人の不安” です。
難しい言葉ではなく、「変わること」と「変わらないこと」を丁寧に伝えること が一番効果があります。
小規模企業であれば、
キーパーソンとの個別対話や小さな説明会がとても効きます。
これはまさに、家族経営が得意とする “顔の見えるコミュニケーション” です。
3.取引先との関係は「タイミング」と「順番」がすべて
取引先への説明が遅れると、
不安から取引を縮小されたり、最悪の場合は打ち切られてしまうこともあります。
重要なのは次の3点です。
- できるだけ早く挨拶
- 重要度の高い順に訪問
- 経営者同士で二人そろって行く
“誰がどの取引先を握っているか” を把握しているのも、実は家族です。
4.「属人化」をほどくのは、妻の観察力
小さな会社ほど属人化が進みます。
とくに奥さまが管理している業務は多岐にわたります。
* 入金のクセ
* 仕入先との口頭ルール
* お客様の急ぎ対応の相場
* 紙のファイルのどこに何があるか
これらを少しずつメモにして“見える化”するだけで、
PMIの成功率は大きく高まります。
5.M&Aは「終わり」ではなく「次の世代へのバトン渡し」
M&Aは、会社が売られる話ではありません。事業と関係性が受け継がれること が本質です。
そしてその成功を左右するのは、
専門用語でも高価なツールでもなく、
毎日の暮らしの中にある “人と人の関係” です。
だからこそ、継ぐ人とその家族の小さな行動がPMIの核心になるのです。
【お知らせ】
中小企業庁「中小PMIハンドブック」の解説記事を、平岡商店サイトに公開しました
今回のテーマであるPMIについて、
中小企業庁が公表した資料(中小PMIハンドブック概要版)をもとに、
平岡商店の視点で整理したニュース記事を自社サイトに掲載しています。
PMIの基礎、失敗事例、取り組むべき順序などを
より実務的にまとめています。
こちらからご覧ください
中小企業のM&A・PMIは、
「専門知識×現場の空気×家族の視点」が三位一体になると
本当にうまくいきます。
継ぐ人、その家族、その会社を支えるすべての方に寄り添いながら、
無理のない一歩をご一緒できればと思っています。



