“再生できる会社”とは何か──M&Aを通じて見える“経営の筋力”
何をすればいいのか分からない
「社長になったけど、何をすればいいのか分からない」
「会社を継いだはずなのに、実感がわかない」
そんな声を、事業承継やM&Aで経営を引き継いだばかりの方からよく聞きます。親から子へ、夫婦間で、あるいは第三者が会社を買って引き継ぐ──そんな場面が増えている今、経営の経験がないまま舵を握る人が、確実に増えています。
けれども、引き継いだその瞬間から「経営者としての力」が備わっている人は、ほとんどいません。実際には、何をどう始めればいいのか分からず、迷いながら日々を過ごしている方が多いのです。
私自身も、まさにその一人でした。
会社の緊急事態で、突然社長に就任。現場での経験も、管理職としての実績も、役員としての知見もあったはずなのに、いざ最終責任者となると、何から手をつけていいのか分からない。そんな日々が続きました。
幸いにも、資金不足という現実に直面し、否応なしに対応せざるを得ない状況が訪れました。資金繰りに奔走する中で、数字の意味を知り、社員との関係を見直し、経営の判断を重ねることで、少しずつ「経営者としての感覚」が育っていったのです。
経営は、現場で育つもの
経営に必要な力は、教科書やセミナーだけでは身につきません。マニュアルを渡されても、経営者塾や後継者育成塾で知識を得ても、それだけで現場が動くわけではないのです。
実際に現場に立ち、社員と向き合い、数字を見て、判断して、時には迷いながらも前に進む──そんな日々の積み重ねが、経営者としての器を広げていきます。
専門家の知識だけでは届かないもの
もちろん、税務や法務、財務などの専門的な知識は重要です。専門家のアドバイスがなければ、事業承継はスムーズに進みません。
でも、経営の現場では、もっと泥くさい「決断の連続」が待っています。社員との関係づくり、資金繰りの判断、取引先との交渉──こうした場面で必要なのは、実際に現場で悩み、汗をかき、失敗しながら身につけてきた人の知恵です。
つまり、机上の理論ではなく、実践を通じて育まれた「経営の感覚」に寄り添ってくれる存在が必要なのです。
経験者による「伴走型コーチング」という選択肢
平岡商店では、こうした現場での育ちを支えるために、「ビジネス・ストレングス・コーチング」という伴走型支援を行っています。
ポイントは3つ:
数字に強くなる:お金の流れを見える化し、経営の判断材料を自分でつかめるように。
現場に強くなる:社員との関係づくりや業務理解を通じて、信頼を築く力を育てる。
決断に強くなる:迷ったときに、経験者と一緒に考えることで、安心して前に進める。
この支援は、マニュアルや塾では届かない「実践の力」を育てることが目的です。現場で起こっていることを“教科書”にして、一緒に考えるスタイルです。
未経験でも、経営者になれる
事業承継やM&Aの時代において、経営の未経験者が舵を握ることは、もはや特別なことではありません。大切なのは、「育つ環境」と「寄り添う人」がいること。
「社長になったけど、何すればいい?」──そんな問いに対して、現場で育つ力と、経験者による伴走支援が、確かな答えをくれます。
次回は「事業承継は、親より夫婦が難しい─信頼はどう育つのか 」についてお話しします。



