「もう限界」と泣いた女性経営者の伴走支援 —会計freeeで再建した創業期の福祉事業、2年間の軌跡—
家族経営のモヤモヤをワクワクにするビジネスストレングスコーチング。この連載では、家族経営や個人事業主の方に向けて、お金と上手に付き合うコツをわかりやすくお届けしています。
仕事の合間に読めるよう、専門用語はできるだけ使わず、実践的な内容を中心に構成しています。家族経営のお金の特徴を理解し、資金繰りを改善する実践的な手法をお伝えします。
日繰り表を財務分析ツールにする。お金に色をつけると見通しが明るくなる
第六回では前編、後編に分けて、日繰り表を使った資金繰り予想表の作り方、財務分析ツールとして活用する方法をご紹介しました。お金に色をつけて分かりやすく見通しをたてること、天気予報のように活用することで見通しが明るくなることをお話ししたと思います。第七回は、日繰り表、予想表を銀行への説明や取引先との対話ツールに使う方法をご紹介します。
経営は RUN&REPORT
「私はレストランを経営しています」を英訳すると I run a restaurant です。やりくりする、きりもりするという言葉を聞くことがあると思いますが、現場での担当業務を持ちながら経営を行う家族経営、小規模事業者の方にとってはRUNという言葉はしっくりきますね。一方で、取引先、社員、銀行、税金、年金など形を変えてお金を借りて回していることから、RUNに加えて「あること」も必要ですね。経営状態はどうなっているか、先の見通しはどうか?整理して報告(REPORT)できるようにしておかなければなりません。
社会との対話ツールが財務諸表、決算書
創業支援の時に必ずお伝えしているのが、経営とはRUN(現場)&REPORT(報告) だということです。経営には様々な関係者(取引先、役所、銀行、社員、地域社会、支援機関等)、社会との対話が必要だからです。そのため、規模の大小に関わらず活動の様子や結果を複式簿記に基づいて記録し、報告する必要がありますね。財務諸表、決算書が必要なのです。
読めければ話しにくいですよね
理想は自分で帳簿をつけ、いつでも報告できる状態にしておきたいところですが、時間が限られていたり、簿記や会計に詳しい社員がいない場合は、税理士や会計事務所に任せきりで、帳簿や試算表に目を通す機会が少ない…といった状況も珍しくありませんね。また、試算表や決算書をじっくり読む時間も限られているため、前年との違いや、各科目の内訳を把握する時間も少ないでしょう。資金繰りは待ってはくれず、いざ銀行に融資を申し込む場合に、説明できるか不安を感じている方も、きっと少なくないはずです。
32才で急遽社長に就任。就任直後から連日資金繰りに奔走した経験がある私もそうでした。決算書の数字(結果)だけで評価され、自分たちの経営努力が評価してもらえないとすれば残念なことですね。結果はともかく、まずは自分たちの努力や工夫を銀行担当者、取引先に理解、評価してもらうために、数字が苦手でも、決算書が読めなくても出来るプレゼンテーションの方法をご説明します。
理想は決算書、試算表
日繰り表を使って銀行、取引先と対話する前提として、理想は試算表、決算書で説明することを知っておいてください。日繰り表はあくまでも社内用の資料であり、正式な試算表、決算書を補完する資料として活用されることをお勧めします。試算表、決算書の読み方が分からない、うまく説明できない、準備できない場合を想定してお話をしていきます。予めご了承ください
残高は正しく
今月、来月の資金繰りの見通しを説明する場合には、必ず前月末の残高(今月初の残高)が実際の事業用の現金、預金通帳の合計額と一致しているか確認しておいてください。預金通帳や現金出納等、または試算表、会計ソフトで確認されることをお勧めします。日繰り表は予想、戦略を立てることを目的としてお話しする中で、ざっくりと金額を入力すれば良いことをご説明したと思いますが、銀行や取引先など社外の方に対して、結果と予想を説明し理解と協力を仰ぐことを目的とするため、前月末の残高は正しく記録されていることが必要ですね。
半年から一年先まで
これまでのコラムでご紹介してきた日繰り表を使った資金繰り予想では、1か月から3か月程度の予想を立てることをお話してきましたが、融資や取引の要請をふまえた銀行、取引先への説明の場合には、半年から1年先までの予想を立てて説明することをお勧めします。前期の決算書や販売ソフト、会計ソフトなどの数字、今期の月別の推移などを踏まえて予想します。融資や取引は長期的な視点で検討するためです。この辺りのことは十分お分かりだと思います。相手が協力してくれるための明確な理由を、数字を踏まえて説明することが大切なのです。
”四つの『る』”を詳しく
はいる、でる、のこる、うる、つかう、かりる、かえすで構成する日繰り表は、数字が苦手でも、家族や社内で先行きを見通し、目標設定、意思決定のためのツールだとご紹介してきました。そのため、本来なら勘定科目に基づいてすべきところですが、数字が苦手でも、簿記や会計知識がなくてもお金の動きを把握出来るように簡易的な科目として使ってきましたが、銀行に説明する場合には、それぞれの項目が何を意味するのか?説明できるようにしておくことをお勧めします。
う る・・売上、雑収入
つかう・・仕入、給料、家賃、納税
かりる・・銀行、家族からの借入
かえす・・銀行、家族への返済
違い、変化の原因を自分の言葉で
前月までの実績を踏まえて今月、来月以降の予想を説明する場合に、うる、つかう、かりる、かえす、それぞれの項目の変化、その原因を詳しく説明することをお勧めします。たとえば「うる(売上)」が増えている場合は、近隣にマンションが完成して人の流れが増えた、テレビで紹介されたなど、理由を説明できると、相手の納得度がぐっと高まります。「つかう」が増えている場合には、社員を採用したため、新店舗を開店した等、契約費用や家賃、光熱費が〇〇円増えている等、実際の資料をふまえて具体的に説明することをお勧めします。
結果(試算表、決算書)と原因(経営努力)をつなぐ
ここまでのご紹介で既にお分かりの方もいらっしゃると思いますが、大切なことは、試算表、決算書、日繰り表は数字の集計結果であり、どのような経緯、努力をしたから、この結果(例:売上増加、資金減少)に至ったのか?を詳細に説明することで、数字に対する信頼性が上がり、融資や取引が検討しやすくなるのです。
かなり労力の必要な作業だと思います。売上があがっているからそんなに細かいことまで説明があるのか?と思われる方もいるかもしれません。よく考えてみてください。実際には銀行の担当者があなたの会社にお金を貸す訳ではなく、上司、本部、保証協会など、ご担当者の背後に多数の関係者が存在し、銀行担当者があなたの会社のために、多くの資料を作成してくれているのです。銀行担当者に自分の会社の様子をいかに詳しく理解してもらうか?そのために詳しい説明が必要があるのです。事業性(会社の特徴、取り組み等)を理解、評価していただくための表現、説明が必要なのです。
現場、銀行、経営者をつなぐ日繰り表
これまでのコラムでご紹介した日繰り表、予想表を使って家族経営のお金の動きを把握し、予想し、対策が打てるだけではなく、振り返り、報告、戦略作りに活用していただければ幸いです。経営とは経なる営みです、日記のように、日々のお金の動きを丁寧に記していくことで、未来の準備ができるのです。
試算表が読めなくても大丈夫です。お金をどのように使って、いまどうなっていて、この先どうなるのか?この三点を日繰り表を使ってきちんと説明すれば、銀行の担当者は分かってくれます。現場、銀行、経営者をつなぐ日繰り表。数字が苦手な方にこそ役立つ“お金の見通しメモ”です。読めなくても、伝えられる」 今日をきっかけに銀行との会話にも少しずつ自信がもてるように。このコラムがそんな第一歩になれば、うれしいです。
もっと詳しく知りたい方へ
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