資金繰り表は“試合の予告先発”。freeeで未来の展開を描く「家族経営の経理コーチング(夏休み特集⑤)」
家族経営のモヤモヤをワクワクにするビジネスストレングスコーチング。この連載では、家族経営や個人事業主の方に向けて、お金と上手に付き合うコツをわかりやすくお届けしています。仕事の合間に読めるよう、専門用語はできるだけ使わず、実践的な内容を中心に構成しています。
「お金がない」「いつもギリギリ」「数字が苦手」といった悩みを抱える方や、創業・事業承継を考えている方にもおすすめです。
※資金調達や節税の話ではなく、商いを長く続けるための豆知識・コツを中心にお伝えしています。
日繰り表は家族経営の羅針盤。お金の不安を自信に変える意思決定ツール
- 日繰り表とは、入金(はいる)、出金(でる)、残高(のこる)を記録する表
- 現在の財務状態を把握できるだけでなく、月末の残高予想が可能
- 残高予想をもとに、目標設定(いつまでに、何を、どれだけ)と手段の選択(始める・辞める・続ける)ができる
- 「三つのる(はいる・でる・のこる)」を意識することで、日繰り表は羅針盤となり、お金の不安を自信に変える意思決定ツールになる
第三回ではお金を回す手法として日繰り表をご紹介しました。入金(はいる)、出金(でる)、残高(のこる)を記録することで、現在の財務状態を把握出来ます。さらに、月末の残高予想を行うことで、いつまでに、何を、どれだけといった目標を設定できます。その目標を達成するために「始めること」「辞めること」「続けること」などの手段を選ぶことが可能になります。
日繰り表をつけたからといって必ずお金が増える、資金繰りが楽になるとは言い切れませんが、お金の不安がある方、いつもギリギリの資金繰りをしている方、先行きが不安という悩みを抱える方にとって課題解決の第一歩につながれば幸いです。また、事業承継を予定している方、創業を考えている方にとっては、お金を回すということを体験的にご理解いただける機会ととらえていただき、まずは身近なところにあるお金を回してみてはいかがでしょうか?
数字が苦手でも大丈夫!はいる-でる=のこる
四回目の今日は、さらに日繰り表を効果的に活用する方法をご紹介します。お金を動きを把握し好循環に変えていく羅針盤として活用するためのコツですので、数字が苦手な方でも簡単に取り組むことが出来ます。また、エクセルやスプレッドシートでの運用をお勧めしています。表の構成はいたって簡単で、年月日、取引内容、入金(はいる)―出金(でる)=残高(のこる)だけです。
日繰り表イメージ 平岡商店WEBサイト
ざっくり
最初にお伝えしておきたいコツは「ざっくり」です。毎日のお金の出入りを詳細に、しかも、複数の銀行通帳や個人の財布まで確認しながら記録するのは大変な労力です。家族経営、小規模事業者の経営者、経理担当者はほとんどが兼任で営業、製造、配送といった業務を兼務されていますので、ご負担も大きいと思います。
一円単位が最善とはいえ、状況に応じて千円単位、一万円単位といったおおよその金額で構いません。また、多くの取引がある場合は、一件ずつ詳細に記録する必要はありません。一括して「仕入代金」「光熱費」といった記入方法で十分です。まずは一か月分を目標に書き出してみてください。
こまめに
二つめのコツは「こまめに」です。日々のお金の動きを把握し、目標と意思決定に活用するのが日繰り表の目的です。丁寧に、正確に記録したい気持ちは分かりますが、先行きを把握し、何をすべきか選択するための手段ですので、資料が揃ってから一か月分まとめて記録するような方法ですと、時すでに遅しといった状況も生じるかもしれません。最初のうちは毎日、慣れてくれば一週間に一度程度の更新をお勧めしています。
さきまで
三つめのコツは「さきまで」です。日繰り表は予想ツールであり、目標設定と意思決定を補佐するツールです。出来るだけ先日付まで作成されることをお勧めしています。最初から半年、一年先まで予想できる方はいませんので、まずは今月末、出来れば来月末までを目標に「ざっくり」で結構ですので予想値を入力することが必要です。ここで日繰り表の新たな効果が現れたら、しめたものです。
答えは現場にある
ここで日繰り表の新たな効果について補足しておきます。先日付の売上、仕入、経費の予想をしたい時に、経営者、経理担当の方が知っている情報は限られていますね。
実はそうした情報は、社員、スタッフの方が詳しいことが多いのです。取引先の動き、商談中の案件、町内の行事など、先日付で情報収集することで自然と日繰り表の精度も上がってきます。もちろん、銀行交渉、納税納付やカード支払いといった決済情報などは経営者、経理担当者の方かよくご存じですが、見込み、予測値を考える場合、その答えは現場にあることが多いのです。
勘の良い方ならもうお判りですね。日繰り表を「さきまで」整えるためには、現場の声を聴くことにつながり、強いては社内のコミュケーションを活発にする効果も出てくるのです。
コロコロ
さて、四つめのコツは「コロコロ」です。先日付の入金、出金予想をする場合、いくら現場に聞くといっても限界も制約もあります。請求書が届かないとわからない、〇日にならないと分からないといった制約もあれば、想定外の出金、値引や相殺などによって予定額が変動することもありますね。
繰り返しになりますが、日繰り表は現金残高を予想することを通じた目標設定、意思決定ツールです。三回目のコラムで地図アプリを例にあげましたが、運用方法も全く同じです。現在値は確定した現預金残高であり、目的地は予想残高です。その間の入金額、出金額、残高も予想です。予想、修正、確定いった更新作業の中で予想精度が上がります。面倒かもしれませんが、コロコロ変わるのがお金の動きなのです。
みえるところに
最後は、今回ご紹介するコツの中で最も重要な二つです。五つめのコツは「みえるところ」です。家族経営で日繰り表を管理するのは経理担当の方が多いのだと思います。日繰り表が経理担当者のパソコンに保管されており、経営者と共有することが出来ない環境ですと効果が薄いですね。誰もがアクセスできる必要はないのですが、資金繰りに携わる方、家族経営ですとご夫婦が必ず見ることが出来る場所に設置、運用されることをお勧めします。
まいにち
最後のコツは「まいにち」です。みえるところに設置した日繰り表は、こまめに手入れをし、その推移を確認し、次の一手を検討し、決定するためにあります。そのため、日々変化するお金を動きを毎日チェックし、変化の要因を確認し、次の一手を考えるのです。特に、現場業務が中心の経営者は経理担当者との綿密な情報共有、相互理解を心がけてください。
実際の声から見える”変化”
日繰り表を始めた方からは、「不安が“具体的”に見えるようになり、手元のお金の流れがわかってきた」 「妻とのお金の会話が前向きになり、表情も柔らかくなった」 といった声が届いています。
数字を記録するだけでなく、行動と対話を生むのが日繰り表の力です。
まとめ
少し長くなりましたので簡単にまとめておきます。日繰り表はいたってシンプルで、運用のコツも出来そうなことばかりです。経営とは「経なる営み(つねなるいとなみ)」です。毎日の歯磨きと同じです。こまめに手入れをし、家族で話し合うことで資金繰りの正確さも見通しもスッキリと磨かれていくものです。
「ざっくり」の金額でよい
「こまめに」入力する
「さき日付まで」予想値を
「コロコロ」変わってよい
「みえるところに」設置
「まいにち」見る、話し合う
いかがでしたか?
なんとなく出来そうかな~と思えたら十分です。
次回は、日繰り表を続けるうえで欠かせない“ある視点”についてお伝えします。
もっと詳しく知りたい方へ
:日繰り表イメージ 平岡商店WEBサイト
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