ロボット介護~認知症の徘徊対策に効果が期待
(概要)
高齢者の見守り介護には、2つの視点があります。ひとつは安全や安心を確保することに視点を置くもの、もうひとつは高齢者に生き生きと暮らしていく機会を与える視点です。
コミュニケーションロボットは、その名の通り、高齢者とのやり取りを主体として、高齢者の暮らしにさまざまな“動き”を与えるための介護ロボットです。
(本文)
高齢者の要介護状態を防ぐコミュニケーションの重要性
齢を重ねると、日常生活の何気ない行動も困難になってきます。それをただ受け入れて活動量を低下させてしまうと、筋肉が萎縮して関節は固まってしまい、ますます動けなくなります。
身体が健康でも行動するのが辛くなるのに、「高齢による衰弱」や「関節などの疾患」「転倒による骨折」といった状態になるとなおさら動くことが困難になり、これと連動して頭の回転も衰え、認知症の原因にもなります。
心身の機能が低下して動けなくなることを「廃用症候群」といい、骨がもろくなったり転倒しやすくなり、要介護状態になる危険性も高まります。
【コミュニケーションを取ることの難しさ】
「動けるのに動かない」「動きたいのに動けない」のどちらの状態だとしても、身体を動かす工夫をするということは、要介護にならないためにも大切なことです。
これらの高齢者、さらに認知症高齢者にしても、会話をしたり動くことを促したりするコミュニケーションはとても重要で、コミュニケーションを取ることで心身の機能低下やうつ病などの予防にもつながります。
ただし、うまくコミュニケーションが取れないことも多く、家族や介護スタッフが必死になればなるほど、コミュニケーションが取りにくい状態になってしまいがちです。
いかにコミュニケーションを取るかは、高齢者の性格や心身の状態によってさまざまであり、かなりの根気が必要になってきます。
コミュニケーションロボットの種類と特徴
コミュニケーションロボットは、主に3種類に分けられて、それぞれに特徴を持っています。
<状態検知対応型>
高齢者の状態に応じて声かけなどをするコミュニケーションロボットです。
ロボットがベッドの上や椅子に座る高齢者を検知して、30分以上そのままでいると「部屋の外に行きませんか?」などと声をかけて行動を促します。
<環境・操作反応型>
高齢者の状況や動き、周囲の環境に応じて、声かけを行います。
部屋の室温を検知して、「エアコンをつけましょう」などの声をかけたり、高齢者がロボットに触ってなでたり抱っこをすることで、その行為に対する気持ちや笑い声、鳴き声を返してくれます。
この種類では人形やヌイグルミ型の会話ロボットがあり、FUJISOFTの介護用ロボット「palro」、介護専用ではありませんがSONYの犬型ロボット「aibo」、ソフトバンクの「ペッパーくん」などが有名です。
<介護者代替プログラム実施型>
施設などで介護者が行うレクリエーションを、プログラムに従って介護者の代わりに行うコミュニケーションロボットです。
プログラムの内容によって体操やダンス、クイズを出したりして、その結果を記録します。
また、利用する高齢者に合わせたレクリエーションをサジェストするタイプのロボットもあります。
コミュニケーションロボット導入の効果
複雑化した現代社会では、年齢などを問わず、ペットや観葉植物などに癒やしを求めている人は少なくありません。
介護用のコミュニケーションロボットも安全を見守るだけではなく、高齢者に対してさまざまな形で癒やしを与えてくれるのが導入の効果です。
コミュニケーションロボットへのさまざまな評価
介護職の人材紹介サービスを展開する「株式会社ウェルクス」が、介護ロボットに対して行った調査を紹介します。
<コミュニケーションロボット導入の反対意見>
「コミュニケーションは人間同士でなければ成立しない」
「ロボットなんかと話すより、人間同士で話すべき。温かみがないから」
「介護は心のケアや温かみが重要。介護ロボットを作る前に、人件費を増やして求人をするべき」
「介護ロボットには人の命は救えない」
<賛成意見>
「仕事に追われてきちんとコミュニケーションがとれないので、少しは役立つ可能性があるから」
「高齢者が退屈している時間に相手になってもらえると助かる」
「高齢者が介護者には言えない愚痴や本音をロボットに言うことで、ストレスを解消できるかもしれない」
「少しでも高齢者に笑顔が増えるなら導入はあってもいい」
どちらが正しいとか間違っているというのではなく、利用対象の高齢者や周囲の人の状況によって意見はさまざまです。
高齢者たちの評価は…?
介護用のコミュニケーションロボットに限らず、AIなどの進化によってロボットと心を通わせわれる現実に近づいていることは確かです。
より高い会話力を持ったロボットは、その仕草や会話内容から「孫よりもカワイイ」と愛着を持つ高齢者もいます。
「家族とうまくいっていない」「家族に迷惑をかけたくない」などの理由で、孤独に暮らす高齢者たちにとっては、コミュニケーションロボットは心のより所にもなり得ます。
ロボットの仕草を見て思わず一緒に身体を動かしたり、会話で笑いが起こったりと、その効果の実証例も増えてきています。
ロボットだからと一概に否定することなく、利用者の反応を見てコミュニケーションロボットの導入を考えることで、高齢者や介護者の負担の軽減につながるのではないでしょうか。