介護事業に対する実地指導と対策
デイサービスでは、介護を必要とする人が自宅で暮らしながら、通いで食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどの介護サービスを受けることができます。要介護者を日常的にケアする家族にとってもこういったサービスは大切で、デイサービスに送り出した後は、自分の時間を過ごすことができます。
今回は、デイサービス事業開業の指定基準を確認しましょう。
【人員基準】
人員基準には、管理者、看護職員(看護師、准看護師)、生活相談員、介護職員、機能訓練指導員の資格要件や配置人員を定めています。
「管理者」
常勤で1人。管理上支障がない場合は兼務可。
「看護職員(看護師、准看護師)」
単位ごとに専従で1人以上。
「生活相談員」
社会福祉士、社会福祉主事(3科目主事)、精神保健福祉士、介護支援専門員、介護福祉士の有資格者。時間数に応じて、同じ通所介護に専従で1人以上。
「介護職員」
単位ごとに、専従で常時1人以上。
ただし、利用者の数が15人までは1名以上で、15人を超える場合は、15人を超える部分の利用者の数を5で割って出た数に1を加えた数以上(つまり、利用者が20人であれば2人ということになります)。
「機能訓練指導員」
看護職員(看護師、准看護師)、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ師いずれかの有資格者1人以上。
はり師及びきゅう師については、機能訓練指導員を配置した介護施設・事業所で6カ月以上の実務経験が求められています。
【設備基準】
「食堂・機能訓練室」は、内法により測定し1人あたり3㎡×利用定員以上の面積が必要です。それぞれにおいて支障がなければ同一の場所でもかまいません。ただし、狭い部屋を合わせて面積を確保することはできません。東京都が指定する通所介護事業所の利用定員は19人以上ですから、3㎡×19人=57㎡に満たない場合、申請はできません。
「静養室」にはベッドが必要です。また、個室またはカーテン等で仕切られていること、同一フロアにあるなど利用しやすい場所に設置することが望まれています。
「相談室」は、利用者およびその家族のプライバシー確保のため、個室またはパーテーション等(高さの目安は170㎝程度)で仕切られていること、とされています。机・いすなども必要です。
「事務室」には、広さの規定はありません。同一法人の他事業(介護保険外事業含む)と事務室が同一の場合、通所介護事業専用の事務机1以上確保されていること。個人情報等を適切に保管するための設備として、施錠できる書庫を設置すること。
そのほか、「トイレ・手洗い」については、要介護者が安全かつ衛生的に使用できるものであること。利用者用、職員用に分かれていればなお可、とされています。
「キッチン」については、衛生的に使用できるものであることはもちろんですが、厨房・キッチンとして従業者が使用するスペースは、食堂・機能訓練室の面積には算入できません。
利用者の送迎のための「駐車場・送迎スペース」についても、利用者が安全に乗降できるスペースであること。
入浴介助を行う場合、「浴室」は十分な脱衣スペースを設け、利用者が安全かつ適切に入浴し、介助できる設備を整える必要があります。
このほか、消防設備や避難経路の確保なども必要になります。
【運営基準】
運営基準についてはさまざまな基準があります。主なものを挙げてみましょう。
・指定通所介護の提供を開始する際には、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている状況並びに家族等介護者の状況を十分把握し、通所介護計画を作成する。
・指定通所介護を提供した際には、その提供日、提供時間、提供した具体的なサービスの内容、その他必要な事項を記録すること。
・指定通所介護等を提供中に利用者の病状等に急変、その他緊急事態が生じたときは、速やかに主治医に連絡する等の措置を講ずるとともに、管理者に報告しなければならない。
・利用者からの相談、苦情等に対する窓口を設置し、指定居宅サービス等に関する利用者の要望、苦情等に対し、迅速に対応する。
・サービス提供に際し、利用者に事故が発生した場合には、速やかに区市町村、介護支援専門員、利用者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じる。
なお、デイサービス事業開業の人員・設備・運営に関する指定基準は、各自治体によって異なるところもあります。各自治体のホームページ等で確認してください。
デイサービスの今後について
デイサービスは介護サービスの中で人気があるサービスですが、利用定員19人未満の小規模デイサービス(地域密着型通所介護)の場合、平成27年度の介護報酬の大幅引き下げ以降、経営状況が悪化している事業所が多いようです。
同時にビジネス(経営)面を考え、小規模デイサービスならではの細やかなサービスをアピールするなど、打開策を見いだす必要に迫られています。
小規模型デイサービスは、訪問介護や訪問看護の訪問系サービスに比べ初期投資が大きく、その割には収支差率が訪問系サービスと比較して良いとは言えません。現在、小規模型デイサービスは厳しい局面にあると言えるでしょう。